こ奴、地獄行きか?(YouTube配信中)

文字数 953文字

「閻魔様、この人間、如何致しましょう?」
「どのような人間じゃな?」
「閻魔帳によりますればこの人間、殺人事件を七回起こしております」
「殺人事件を、七回も?」
「そしてそれらの殺人事件で殺されたのは、合計で九人!」
「こ奴、九人も殺しておったのか?」
「それで刑務所には合計で、え~、何と! 四十五年も服役しております」
「う~ん」
「しかしそれだけでは御座いません」
「それだけではない?」
「迷宮入りした殺人事件および暴行事件も多数御座いまして、さらに十二人が殺されており、三十五人が瀕死の傷害を負っております」
「どれどれ、わしにもちょいとその閻魔帳を見せてみろ。そもそも閻魔帳とは、わしが見るものじゃからな」
「そうですね。それじゃどうぞ」
「どれどれ。う~ん。確かにこれらの事件は発覚もせず、豪快に迷宮入りしておるな」
「いやいや、迷宮入りどころか、こ奴が巧妙に他人に罪をかぶせ、多数が誤認逮捕され、中には死刑判決が出て実際には処刑された者もいると、ここに明確に記されておりますぞ!」
「確かにそう書いてあるのう。しかしなんとまあ、世にも恐ろしい奴じゃのう。おやおや、それにこ奴、五十年間麻薬密売を行い、発覚しない詐欺事件が二十七件とも書いてあるのう。う~ん…」
「どう致します? やはりいくら何でもこ奴、地獄行きは避けられますまい」
「おや? しかしここに、このようなことが書いてある。見てみろ」
「ここですか。なになに、え~、この人間、子供の頃に一匹の亀を助けておりますね」
「そのようじゃな」
「それがどうか致しましたか?」
「おぬしは地獄送致除外特例第4957条28654968項という物を知らぬのか?」
「はぁ、私、寡聞にして存じ上げておりません」
「あれは確か三千年ほど前のことじゃ。とある動物保護団体の陳情により、この法案が魔界の49583758年度の魔国会で審議の上、魔会議員の賛成多数で可決され、同年施行されたのじゃ」
「そうだったのですか。で、施行されて、それで?」
「じゃから亀を助けた者は、その理由の如何に拘わらず、つまり例えどのような事情があったとしても、地獄行きが免除されるのじゃ」
「理由の如何を問わず、例えどのような理由があっても、地獄行きが、免除? で、免除されて、どうなるのです?」
「竜宮城へ送致されるのじゃ」
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