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文字数 969文字

 彼はいつもコンビニで、やれお弁当は温めますかだの、お箸は何本御利用ですかだの、とにかくそういうことを、ごちゃごちゃ言われるのがうざい! と、常日頃思っていた。
 そんな彼はある日、あるコンビニを訪れ、弁当を持ってレジへと向かった。

「お弁当、温めますか?」

 それきた! と彼は思った。
 弁当は家へ持ち帰り、食べる前に電子レンジで暖めれば済むことだ、と思ったので、彼は、
「暖めなくて結構ですよ」と言った。

 すると店員が「お箸は何本お付けしますか?」と訊いたので、
「いやいや、お箸も結構です」と答えた。

 だって家にあるお箸を使えば済むことだ。
 しかもそういう考えは森林保護にも資することだと、常日頃、彼は考えていたのだ。
 だけど店員はさらにこう言った。

「フォークはご利用ですか?」 
 それで彼は「フォークはいりません」と答えた。箸も要らない。フォークも要らない!

 すると店員は、
「キャンディースプーンはご利用ですか?」と言ったので、彼は、
「キャンディースプーン? そんなもの要りません!」と言った。

 だけど、店員は、
「ティーメジャースプーンはご利用ですか?」と訊いてきた。

 それで彼はあきれ果てて(ふざけるな!)と思いながら、
「それも要りません!」と大声で言ったけれど、店員は一歩も引かず、

「網目仕上げ穴あきスプーンはご利用ですか?」と訊いてきた。
 それで爆発寸前の彼は、
「要りませ~~~ん!!」と吼えた。

 だけど店員はまだまだ一歩も引かず、
「スタンダードデザートスプーンはご利用ですか?」と訊いてきた。
 それで彼は「要りません要りません要りませ~~~~~ん!」とわめいた。

 そしたら店員は、「あ、スピードくじ1万円が当たっていますが…」というと、彼は思わず反射的に「要りませ~~~~~ん!」と答えてしまった。

 それで店員は、「あらそうですか。それではこのくじは、こちらで処分させていただきます」と言った。

 そして店員は…
(へへへ、今日はこれで3人目だ。こうやって要らなそうなスプーンなんかを「ご利用ですか?」と言い続けると、客は反射的に「要りません!」とわめくのだ。だからくじが当たっても、「要りません」と言わせるのが俺のテクニックなのだ。これで今日は3万円、丸儲けだ。俺は伊達や酔狂でレストランでバイトしていた訳ではないのだ。いひひひひ…)

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