何だこの猫缶の山は⁉

文字数 2,178文字

 ええと、この作品は前作「キャットフードの狩り」の続編で御座います。この作品に突撃された方は、一つ前の作品からお読みくださいね。
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 気が付いたら俺は猫部屋のドアから出て、キャットフード置き場の前に立っていた。
 するとあろうことか、目の前には猫缶の山!
 まぐろ味、チキン味、かつお味、海鮮風味、その他いろいろ♪

(一体どういう訳なんだ? 誰がこんなにたくさんの猫缶買ったんだ?)

 俺はしばらく考えたが、これだけ買うのに一万円は下らない。で、嫌な予感がした俺は、念のためズボンのポケットからサイフを出し、中身を確かめたら何と、すっからかん!

 何たること!
 あろうことか、一万円がどろんと消えているではないか!
 そして少しして、俺の記憶がだんだんよみがえってきた。
 どういう訳か俺は、この午前中ずっと猫部屋にいたような気がする。

 といっても猫にキャットフードをくれてやったり、猫のトイレを掃除したり、はたまた猫部屋の大掃除とか、とにかくそういうことをずっとやってた覚えが全くなく、ひたすら猫部屋で惰眠をむさぼっていた気がする。
 ときどき起きて、ほかの猫とたわいのない会話をしたくらいだ。
「きょうは暖かいね」とか「あの爪とぎ、使い心地いいね」とか「あの猫じゃらし、面白いにゃん」とか。

 面白いにゃんだと?
 にゃん?
 じゃ、もしかして、俺は猫部屋で猫やってにゃんか?

 そういえばたしかにそうだ!
 たしかに俺は猫やってた気がする!

 そしてその間、猫部屋にはキジ猫のこいつと、

 お花の好きなこいつと、

 ふわふわした長毛のこいつと、

 もう一匹のぽかんとした方のキジ猫のこいつと、

 独眼流のこいつはいた。


 しか~し! ブチ猫のこいつ!

 こいつだけはいなかった!

 はは~ん、こいつが犯人、いやいや、犯猫だ!
 だけどこいつが自分で猫部屋を抜け出し、自動車を運転してホームセンターに猫缶を買いに?

 んなばかな。
 まあいい。とりあえず猫缶は返品だ!

 それで俺は再びサイフを見たが、レシートが入ってない!
 俺はホームセンターで買い物したときは、念のためレシートをとっておき、サイフに入れておく。
 場合によっては返品するためだ。

 だけどレシートがなければ、原則、返品不可だ。
 まさかあのブチ猫が俺の車を運転し、有り金全部使って猫缶を買い、俺に返品させないようにレシートを廃棄処分した?
 んなばかな。
 そこまで悪知恵が働くか?

 う~ん。だけどあいつならやりかねんな。
 そうだ。とりあえずこの猫缶を全部持ってホームセンターへ行き、ペット用品の係りの猫玉さんに相談しよう!


「そうですよ。たしかに今日の午前中にお客様は、お財布の中のお金全部を使って猫缶を買うとおっしゃり、私が各種猫缶をお選びし、カートに載せましたよ」
「俺、そんなことした記憶がないんです」
「ええと、そういえばお客様は珍しく白黒ブチのお洋服なんかを着ておられましたね。それに、なぜかぽよ~んと白いひげが生えていて、なんだか猫、それもブチ猫みたいでしたね」
「ブチ猫?」

 それで俺はほぼ確信した。犯人、いや、犯猫はあのブチだ!

「ええと、レシートないけどこの大量の猫缶、返品できませんかね?」
「レシートがないと返品できない規則ですが、猫缶なら賞味期限も問題ないし、同額の商品との交換でしたら…」

 交換ならできるのか。よし! 

「それなら多頭飼い用のお徳用キャットフードに替えていただけます?」

 奴らに猫缶などというぜいたく品をそうそう食わせられるか!

「それでしたら7キロ入り1500円のがございますよ」
「それじゃそれで」
「猫缶は合計で10500円でしたから、7キロ入りお徳用キャットフード7袋、合計49キロになります」
「いいですよ」

 へへへ、ざまあみあがれ。
 今日から奴ら、お徳用キャットフードだ! 

「しかしどうしてうちのブチ猫が、人間に扮してここまで来て、猫缶を買っていったのでしょうかねぇ?」
「ええと、それってもしかして、そのブチ猫ちゃん、お客様に一時的に転生されていたのでは?」
「一時的に転生?」
「ええ。最近、猫ちゃんが人間に一時転生されることって、とても多いのですよ」
「そんなことが…」
「ええと、私はなんとなく感づいていましたよ。そして私自身も現在、猫から人間に一時的に転生させていただいておりまして、お昼過ぎまでここでパートで勤務しております。だからもうしばらくしますと、私も猫にもどりますの。おほほほほ」

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