外来にて(B)

文字数 560文字

 ある日私が診療をしていると、珍しい患者さんが、奥さんとともにやって来た。
 そして奥さんは深刻そうに、こう言ったのだ。

「突然、主人の言葉が変になってしまったのです。何と言っているのかさっぱり分からなくなって、最初は私の頭がどうかしたのかと思いましたが、私は他の人がしゃべる言葉はちゃんと理解できるので、やっぱり、主人がおかしくなったのだと思って、それで先生のところへ連れてきたのです」

 その奥さんの話を聞いて、それから私はご主人に尋ねてみた。
「ご主人は、言葉がどうかされたのですか?」
 するとご主人がしゃべり始めた。
「てちかちとにきちとくちこいすらなからとにかいもらねのらみみみちくいみみみちのらからこちとにのちしいみちにみらしいとなるくらみみから」
「なんですって?」
「にのらもちかかいにもちとなみちみみからのちみちすちみちにしいとくらなのちるてちのちすにもちといみみ」

 ご主人の話を聞いて、一瞬私は頭がパニックになってフリーズして、そして私は、しばらく頭を抱え、考えまくり、そしてはたと、あることに気付いた。
 それで私はこう言った。

「もしかして、ご主人の言語中枢は、ローマ字入力がかな入力が切り替わっていませんか? ええと、ご主人のAlt+ひらがなキーを押せばすぐに治ると思いますよ」

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