切符売り場の三毛猫

文字数 1,090文字

 俺がバイクで走っていたら、後ろからヤンキーの四駆が煽ってきた。
 ばかたれがと思ってバイクのミラーで見てみると、いかにも頭の爆発したのが運転していた。
 
 それでどうしたもんかと思いながら交差点に差し掛かったとき、ヤンキーが強引に俺のバイクを追い越した…と思ったら、次の瞬間、信号無視のダンプが右側から猛スピードで交差点に進入し、ヤンキーの車はダンプに飲み込まれ、木っ端微塵。

 それで俺が、言わんこっちゃないこのばかたれがと思いながらバイクのブレーキを掛けていると、突然、ヤンキーの車の後ろに、これ見よがしに付いていた、ギンギラギンの巨大なスペアの車輪が外れ、物凄い勢いでブッ飛んで来て俺の目の前に迫った。
 そして俺の意識がフェードアウト…


 気が付いたら俺は薄暗い、ある小さな駅の切符売り場にいた。
 何人かが切符販売機の前に並び、俺の前にはあのヤンキーが神妙な様子で立っていた。
 そして順番が来て、ヤンキーは切符を買うと、ホームの方へと歩いて行った。

 それから俺が切符を買う番になったのだけど、見てみると、何故か切符販売機が故障していて、その前にいつのまにか、一匹の三毛猫が佇んでいた。    

 そしてその三毛猫は俺にこう言った。
「切符販売機は故障しました」
「え?」
「故障です。切符は買えません。だからあなたは列車には乗れません」
「乗れない? そうなんですか。ところでええと、俺が乗ろうとしていたのは、一体、何という列車なのですか?」
「特急転生号です」
「転生号?」
「そうです。だけどあなたはもう乗れないので、お引き取り願うしかありません。つまりあなたは転生できません」
「お引き取り願う? それに、転生できない?」
「そうです。それと、切符が買えなかったのは、あなたの不可抗力ですので、私から魔王にちゃんと伝えておきます。あなたに責任はありません」
「俺に責任ない…」
「どうか今夜はお引き取り下さい」

 それから俺の意識がまたフェードアウトして、そして気が付いたら俺はベッドの上で、俺の体には何やらチューブのようなものが、たくさん繋がっていて、目の前には白衣を着た女性がいて、多分それは看護師で、だからそこは病院だった。

 それから彼女は言った。
「気が付いたのですね。あなたはあの事故で大変な怪我をして、一カ月以上意識不明だったのです。だけど意識が戻って本当に良かった。ずっと意識不明の重体で、先生ももう絶望的だと言っておられたのですよ」


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