たられバット
文字数 4,246文字
「あの投手交代は拙かったですね。あのまま続投させていれば、あそこでタイムリーは打たれなかったんじゃないですかねえ」
彼は試合の後、球場の出口で、あるプロ野球の球団のマークの着いたバスに乗り込もうとしていた、その監督に話しかけた。
「ああそうだねそうだね」
監督はただのファンであろう彼を軽くあしらい、それからそそくさとバスに乗り込もうとした。
だけど彼は食い下がった。
「監督監督! 実は、良い話があるんですよ!」
「良い話?」
「そうです!」
「じゃ、また今度聞かせてもらうよ」
「本当ですか? 今度聞きますか?」
「わかったわかった。今度聞くよ」
「それじゃ今度聞いてもらいますよ。それじゃ、私の名刺を差し上げます!」
「名刺? わかったわかった。話は今度聞こう」
そう言うと監督はその名刺を受取り、無造作にそれをユニフォームのパンツの尻のポケットに差しこみ、それからそそくさとバスに乗り込んだ。
実はそれから、その監督のチームは連敗街道を爆走した。
まあそういうことってあるじゃないですか。
そしてそんなある夜の試合中のことだった。
その試合も敗色濃厚。
代えたピッチャーは打たれる。
チャンスに出した代打は併殺打。
スクイズを試みるが見事に相手バッテリーに見破られ、アウト!
何をやってもうまくいかない。
監督はベンチで頭をかかえていた。
と、そのとき、何故か監督の尻のポケットの辺りが痒くなった。
しかし原因は大層な事ではなかった。
原因は監督が家で飼っているキジ猫を抱っこしたときに、ノミが監督の尻に移動し、夜中に尻を刺したことだった。
ともあれ監督は、尻のポケットのところをぽりぽりと掻こうと、尻のポケットに手を突っ込んだのだ。
そして渡されていた名刺に手が触れた…
そしてその日の夜更け、その監督に名刺を渡した、あの彼の安アパートの黒電話がリーンとなった。
ノスタルジックな黒電話だが、彼はケイタイの類が大嫌いらしく、昔風の黒電話を愛用していたのだ。
まあそれはどうでもいい。
もちろん電話を掛けたのは、連敗街道爆走中の、件の監督だった。
それで、名刺を渡した彼が固定電話の受話器を取ると、監督の声と、それからがやがやと騒がしい周囲の騒音が聞こえた。
そして彼は一瞬にしてその空気を読んだ。
ぼろ負けの試合。
尻のポケットの名刺に手が触れた監督は、自分の名刺を取り出す。
ともあれ監督はそのあと飲み屋。
そして再び名刺のことを思い出し、そして藁をもすがる思いで自分に電話を掛けてきた…
ちなみの監督のユニフォームのパンツは彼が名刺を渡してから何度も洗濯され、そのため名刺の印刷は消えそうになっていたのだが、何とか彼の固定電話の番号は読めたようだった。
まあそれもどうでもいい。
「ええと、で、あの…、その、良い話って?」
監督は少々呂律が怪しかった。
飲み屋で相当飲んでいるようだった。
ともあれ彼は答えた。
「聞きに来ますか?」
それから数日後の試合のないある日のこと。
監督は彼の元を訪れた。
「やあ、こんにちは。その『良い話』を聞きに来ましたよ」
「いやあ、球団のマークの入ったバスに乗り込もうとされていたあの時以来、お久しぶりです」
「はぁ、あのときはどうも。で、その良い話、とは?」
「まあどうぞお上がり下さい」
それから監督は彼の安アパートの部屋に入り、くたびれたソファーに座った。
そして彼は監督に一本のバットを見せてこう言った。
「これです。『たられバット』といいます」
「たられバット?」
「そうです。良い名前でしょう?」
「よい名前… う~ん。何の変哲もないバットに見えますが」
「確かに見た目はただのバット。だけど実はこれは、とんでもない代物なのです」
「とんでもない、代物?」
「そうです。実はこれ、タイムマシンなんです」
「タイムマシン?」
「そうです。実は私はず~~~~っと、タイムマシンの研究をやっていました。最初に思い付いたのは中学一年の時だったかな。中間試験で、確かあれは国語の試験でした」
「国語の試験?」
「そうです。で、そのときに物凄いおならが出たのです」
「おならが…」
「で、それはそれは物凄い音だったので、私のクラスのみならず、両側の、合わせて三クラスの全員が爆笑したのです」
「三クラスの全員が爆笑? そりゃまたわっはっは」
「笑い事ではありません! で、全員が爆笑して、それで国語の試験ができなくなり、そのことに対してPTAからの抗議の電話が学校へ殺到したのです」
「ほ~、それはそれは…」
「そして私は担任はおろか、校長にもこっぴどく叱られ、罰として学校中の便所の掃除をさせられたのです」
「ほ~、それはまたお気の毒に…」
「まあ、おならも爆笑も、便所掃除もどうでもいいです。で、そのおならが出たその瞬間に閃いたのです」
「何を?」
「だから、タイムマシンです!」
「ほ~」
「で、それから数十年。私は自由な時間が欲しかったので定職にも就かず、バイトをしながらそのときに思い付いたタイムマシンの研究を続けたのです」
「ほ~、それで?」
「それで完成したのがこの『たられバット』なのです」
「タイムマシンを研究して『たられバット』が出来た。で、そのこころは?」
「だから『たられバット』はタイムマシンなのです」
「何だか話がよく分かりませんが…」
「つまり『たられバット』はタイムマシンです。だけど実は、私が開発したタイムマシンには、致命的な欠陥があったのです」
「ほ~、それはどんな欠陥?」
「通常、タイムマシンはどんな時間、それは過去でも未来でも、自由な時間に移動出来るものです」
「そうですよなぁ」
「ところが私の開発したタイムマシン、つまりあの大きなおならが出たときに思い付いたこのタイムマシンは『7分だけ過去へ行ける…』それだけの機能しかなかったのです」
「7分だけ過去へ?」
「そうです。たったの7分です。だから通常そんなタイムマシンは何の役にも立ちません」
「うーん」
「私は猛烈に落ち込みました」
「まあそうでしょうなあ。学校中の便所掃除をさせられて、その成果がたったの7分しか戻れないタイムマシンだっただなんて…」
「あの、このタイムマシン、便所掃除をしながら便所で作った訳では…」
「ああ、そうでしたそうでした。わっはっは」
「ところが!」
「ところが?」
「プロ野球の世界なら、たったの7分でも過去へ行けるというのは、大きな意味があるということに気付いたのです」
「ほ~、で、そのこころは?」
「だから『たられバット』ですよ。実は私はこのタイムマシンを小型化し、バットの中に組み込むことに成功したのです。というのは、プロ野球の世界では7分だけ過去へ行けるというのは大きな意味があると気付いたからです」
「どんな意味?」
「え~っと、よく『たられば』って言うでしょう? あのとき投手を代えなかったら。代打を送らなかったら。あのスクイズが成功していればってね」
「たしかにそうですよね。解説の連中は結果論で言いたいことを言いますからな。しかしそれは所詮結果論」
「ところが7分だけ過去へ戻れたらどうですか? 7分もあれば打者一人くらい、あるいはワンアウトくらいの時間があるでしょう。だから投手交代でも、代打でも、スクイズでも、7分だけ過去へ戻れば、その結果論を試すチャンスがあるでしょう?」
「結果論を試せる?」
「そうです!」
「結果論を…」
「そうです!」
「結果論…」
「そうですよ!」
「なるほど! で、そのバットはどうやって使うの?」
「グリップエンドをくるりと回せば作動します。そして7分前の過去に…」
そしてその監督はその「たられバット」を大きな声では言えないくらいの金額で買った。
それからその監督のチームの快進撃が始まった。
何たって結果論で采配が振るえる。
代打を出して三振したら、「たられバット」のグリップエンドを回し7分前へ。
他の奴を代打に出す。
ホームランを打つかもしれない。
投手交代で失敗したら先発を続投させてみる。
案外抑えるかも知れない。
とにかくバントでも強硬策でも盗塁でも、なんでもかんでも失敗すれば、たられバットのグリップエンドを回し、別の策を試みる。
とにかくその気になればうまくいくまで何度でも何度でも、いろんな采配を試すことが出来たのだ。
こうしていつしかその監督は「名監督」と言われるようになった。
ベンチでバットを持って采配をする姿は監督のトレードマークにもなった。
ところで戻した7分は物理的にどうなっていたのかというと、それは実際のところ謎なのだが、ともあれそれは、宇宙物理学的には「うやむや」になっているようだった。
そして不思議な事に時間を戻した監督本人以外の誰一人、時間が戻ったことに気付かないらしかったのだ。
理由はさておいて…
ただし公式の試合時間は戻した回数の7倍、例えば五回も戻せば35分、試合時間は延びているようだったし、その結果「試合時間の短縮」がプロ野球機構のお年寄りたちの間でも議論され始めたのだが、それもどうでもよい。
ところで、これはごくごく自然なことだけど、実は彼はプロ野球の全ての監督に「たられバット」を売り込んでいたのだった。
もちろん「たられバット」は瞬く間に普及していった。
そしていつしか、多くの監督がベンチでバットを持って采配を振るうようになったのだ。
これはある意味「イコールコンディション」とも言え、例の尻をぽりぽりと掻こうとした監督のチームの快進撃は終わった。
まあ、それもどうでもよい。
ともあれ「たられバット」は豪快に普及したのだ!
だって、「たられば」で采配出来るんだもん!
そんなある夜のこと。
その夜、偶然にどの球場も、とんでもない大接戦のシーソーゲームとなった。
そういう訳でどの監督も「たられバット」を使いまくった。
そして「結果論の応酬」、つまり選手交代の「やり直し」が延々と延々と続いたのである。
そういう訳でその夜、どの球場どの球場も、決して試合が終わることはなかった。
彼は試合の後、球場の出口で、あるプロ野球の球団のマークの着いたバスに乗り込もうとしていた、その監督に話しかけた。
「ああそうだねそうだね」
監督はただのファンであろう彼を軽くあしらい、それからそそくさとバスに乗り込もうとした。
だけど彼は食い下がった。
「監督監督! 実は、良い話があるんですよ!」
「良い話?」
「そうです!」
「じゃ、また今度聞かせてもらうよ」
「本当ですか? 今度聞きますか?」
「わかったわかった。今度聞くよ」
「それじゃ今度聞いてもらいますよ。それじゃ、私の名刺を差し上げます!」
「名刺? わかったわかった。話は今度聞こう」
そう言うと監督はその名刺を受取り、無造作にそれをユニフォームのパンツの尻のポケットに差しこみ、それからそそくさとバスに乗り込んだ。
実はそれから、その監督のチームは連敗街道を爆走した。
まあそういうことってあるじゃないですか。
そしてそんなある夜の試合中のことだった。
その試合も敗色濃厚。
代えたピッチャーは打たれる。
チャンスに出した代打は併殺打。
スクイズを試みるが見事に相手バッテリーに見破られ、アウト!
何をやってもうまくいかない。
監督はベンチで頭をかかえていた。
と、そのとき、何故か監督の尻のポケットの辺りが痒くなった。
しかし原因は大層な事ではなかった。
原因は監督が家で飼っているキジ猫を抱っこしたときに、ノミが監督の尻に移動し、夜中に尻を刺したことだった。
ともあれ監督は、尻のポケットのところをぽりぽりと掻こうと、尻のポケットに手を突っ込んだのだ。
そして渡されていた名刺に手が触れた…
そしてその日の夜更け、その監督に名刺を渡した、あの彼の安アパートの黒電話がリーンとなった。
ノスタルジックな黒電話だが、彼はケイタイの類が大嫌いらしく、昔風の黒電話を愛用していたのだ。
まあそれはどうでもいい。
もちろん電話を掛けたのは、連敗街道爆走中の、件の監督だった。
それで、名刺を渡した彼が固定電話の受話器を取ると、監督の声と、それからがやがやと騒がしい周囲の騒音が聞こえた。
そして彼は一瞬にしてその空気を読んだ。
ぼろ負けの試合。
尻のポケットの名刺に手が触れた監督は、自分の名刺を取り出す。
ともあれ監督はそのあと飲み屋。
そして再び名刺のことを思い出し、そして藁をもすがる思いで自分に電話を掛けてきた…
ちなみの監督のユニフォームのパンツは彼が名刺を渡してから何度も洗濯され、そのため名刺の印刷は消えそうになっていたのだが、何とか彼の固定電話の番号は読めたようだった。
まあそれもどうでもいい。
「ええと、で、あの…、その、良い話って?」
監督は少々呂律が怪しかった。
飲み屋で相当飲んでいるようだった。
ともあれ彼は答えた。
「聞きに来ますか?」
それから数日後の試合のないある日のこと。
監督は彼の元を訪れた。
「やあ、こんにちは。その『良い話』を聞きに来ましたよ」
「いやあ、球団のマークの入ったバスに乗り込もうとされていたあの時以来、お久しぶりです」
「はぁ、あのときはどうも。で、その良い話、とは?」
「まあどうぞお上がり下さい」
それから監督は彼の安アパートの部屋に入り、くたびれたソファーに座った。
そして彼は監督に一本のバットを見せてこう言った。
「これです。『たられバット』といいます」
「たられバット?」
「そうです。良い名前でしょう?」
「よい名前… う~ん。何の変哲もないバットに見えますが」
「確かに見た目はただのバット。だけど実はこれは、とんでもない代物なのです」
「とんでもない、代物?」
「そうです。実はこれ、タイムマシンなんです」
「タイムマシン?」
「そうです。実は私はず~~~~っと、タイムマシンの研究をやっていました。最初に思い付いたのは中学一年の時だったかな。中間試験で、確かあれは国語の試験でした」
「国語の試験?」
「そうです。で、そのときに物凄いおならが出たのです」
「おならが…」
「で、それはそれは物凄い音だったので、私のクラスのみならず、両側の、合わせて三クラスの全員が爆笑したのです」
「三クラスの全員が爆笑? そりゃまたわっはっは」
「笑い事ではありません! で、全員が爆笑して、それで国語の試験ができなくなり、そのことに対してPTAからの抗議の電話が学校へ殺到したのです」
「ほ~、それはそれは…」
「そして私は担任はおろか、校長にもこっぴどく叱られ、罰として学校中の便所の掃除をさせられたのです」
「ほ~、それはまたお気の毒に…」
「まあ、おならも爆笑も、便所掃除もどうでもいいです。で、そのおならが出たその瞬間に閃いたのです」
「何を?」
「だから、タイムマシンです!」
「ほ~」
「で、それから数十年。私は自由な時間が欲しかったので定職にも就かず、バイトをしながらそのときに思い付いたタイムマシンの研究を続けたのです」
「ほ~、それで?」
「それで完成したのがこの『たられバット』なのです」
「タイムマシンを研究して『たられバット』が出来た。で、そのこころは?」
「だから『たられバット』はタイムマシンなのです」
「何だか話がよく分かりませんが…」
「つまり『たられバット』はタイムマシンです。だけど実は、私が開発したタイムマシンには、致命的な欠陥があったのです」
「ほ~、それはどんな欠陥?」
「通常、タイムマシンはどんな時間、それは過去でも未来でも、自由な時間に移動出来るものです」
「そうですよなぁ」
「ところが私の開発したタイムマシン、つまりあの大きなおならが出たときに思い付いたこのタイムマシンは『7分だけ過去へ行ける…』それだけの機能しかなかったのです」
「7分だけ過去へ?」
「そうです。たったの7分です。だから通常そんなタイムマシンは何の役にも立ちません」
「うーん」
「私は猛烈に落ち込みました」
「まあそうでしょうなあ。学校中の便所掃除をさせられて、その成果がたったの7分しか戻れないタイムマシンだっただなんて…」
「あの、このタイムマシン、便所掃除をしながら便所で作った訳では…」
「ああ、そうでしたそうでした。わっはっは」
「ところが!」
「ところが?」
「プロ野球の世界なら、たったの7分でも過去へ行けるというのは、大きな意味があるということに気付いたのです」
「ほ~、で、そのこころは?」
「だから『たられバット』ですよ。実は私はこのタイムマシンを小型化し、バットの中に組み込むことに成功したのです。というのは、プロ野球の世界では7分だけ過去へ行けるというのは大きな意味があると気付いたからです」
「どんな意味?」
「え~っと、よく『たられば』って言うでしょう? あのとき投手を代えなかったら。代打を送らなかったら。あのスクイズが成功していればってね」
「たしかにそうですよね。解説の連中は結果論で言いたいことを言いますからな。しかしそれは所詮結果論」
「ところが7分だけ過去へ戻れたらどうですか? 7分もあれば打者一人くらい、あるいはワンアウトくらいの時間があるでしょう。だから投手交代でも、代打でも、スクイズでも、7分だけ過去へ戻れば、その結果論を試すチャンスがあるでしょう?」
「結果論を試せる?」
「そうです!」
「結果論を…」
「そうです!」
「結果論…」
「そうですよ!」
「なるほど! で、そのバットはどうやって使うの?」
「グリップエンドをくるりと回せば作動します。そして7分前の過去に…」
そしてその監督はその「たられバット」を大きな声では言えないくらいの金額で買った。
それからその監督のチームの快進撃が始まった。
何たって結果論で采配が振るえる。
代打を出して三振したら、「たられバット」のグリップエンドを回し7分前へ。
他の奴を代打に出す。
ホームランを打つかもしれない。
投手交代で失敗したら先発を続投させてみる。
案外抑えるかも知れない。
とにかくバントでも強硬策でも盗塁でも、なんでもかんでも失敗すれば、たられバットのグリップエンドを回し、別の策を試みる。
とにかくその気になればうまくいくまで何度でも何度でも、いろんな采配を試すことが出来たのだ。
こうしていつしかその監督は「名監督」と言われるようになった。
ベンチでバットを持って采配をする姿は監督のトレードマークにもなった。
ところで戻した7分は物理的にどうなっていたのかというと、それは実際のところ謎なのだが、ともあれそれは、宇宙物理学的には「うやむや」になっているようだった。
そして不思議な事に時間を戻した監督本人以外の誰一人、時間が戻ったことに気付かないらしかったのだ。
理由はさておいて…
ただし公式の試合時間は戻した回数の7倍、例えば五回も戻せば35分、試合時間は延びているようだったし、その結果「試合時間の短縮」がプロ野球機構のお年寄りたちの間でも議論され始めたのだが、それもどうでもよい。
ところで、これはごくごく自然なことだけど、実は彼はプロ野球の全ての監督に「たられバット」を売り込んでいたのだった。
もちろん「たられバット」は瞬く間に普及していった。
そしていつしか、多くの監督がベンチでバットを持って采配を振るうようになったのだ。
これはある意味「イコールコンディション」とも言え、例の尻をぽりぽりと掻こうとした監督のチームの快進撃は終わった。
まあ、それもどうでもよい。
ともあれ「たられバット」は豪快に普及したのだ!
だって、「たられば」で采配出来るんだもん!
そんなある夜のこと。
その夜、偶然にどの球場も、とんでもない大接戦のシーソーゲームとなった。
そういう訳でどの監督も「たられバット」を使いまくった。
そして「結果論の応酬」、つまり選手交代の「やり直し」が延々と延々と続いたのである。
そういう訳でその夜、どの球場どの球場も、決して試合が終わることはなかった。