大相撲定食

文字数 815文字

 俺は多飯食いには少々自信がある。しかもその日、俺は豪快に腹がへっていた。
 何故にそうも腹がへっていたか…まあそういうことって、あるじゃないですか。
 それで俺が定食屋を求め街をさまよっていると「大相撲定食」という、いかにも沢山食べられそうな店があった。
「いらっしゃいませ♪」
 感じのいい、清々しい感じの女性の声。
「どうぞ、サンプルをご覧くださいね♪」
 それでガラスケースにずらりと並んだ豪快なサンプルを見て、俺は圧倒された。
  ソップ炊き 水炊き 味噌ちゃんこ
  湯豆腐ちゃんこ 塩ちゃんこ しゃぶしゃぶ、
  カレーちゃんこ キムチちゃんこ!
 それぞれに、小結、関脇、大関、横綱コースがあり、小結250円、関脇300円、大関350円、横綱400円だった。
 そしてどれも物凄いボリュームだが、とりわけ横綱コースはすさまじかった。
 しかもケースの上には、
「あなたも挑戦しませんか!」と書いた紙があったのだ。
 それを見るや、「大飯食いの俺」のチャレンジスピリットに火が付いた。
 ここは大飯食いとして、挑戦しない訳にはいかない! 
 それで俺は迷わず400円の「横綱コース」にし、鍋はオーソドックスに鶏のソップ炊きにした。
 元来力士は四足動物を食べてはいけないのだ。四足=手が地面に着く=負けなのだ!
 それから念のため、「食券」などという恐ろしい物を買わされないのかと、店内を見回したが、女性がにこやかに佇んでいるだけなので俺は安心し、それで俺は、
「ソップ炊き横綱!」というと、女性はまたまたにこやかに、
「前金で400円で~す♪」と言ったので、俺が400円払うと、
「どうぞ中へ♪」と、またしてもにこやかに言った。

 それで俺が中に入ると、何故かそこは土俵で、そこでは恐ろしく強そうな力士が四股を踏んでいた。
 そして俺が呆気にとられていると、その力士は俺にこう言った。
「おまえ、横綱に挑戦しに来たんだろう? 俺に勝ったらちゃんこ食わしてやる!」
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