マウントマウンド

文字数 1,408文字

 深い緑のジャングルを通り抜けると、突然視界が開けた。
 そこには美しいコニーデ式の火山が姿を現した。
 円錐形で富士山のようだが、それよりはかなり平べったい。
 
 それが何という山なのかは分からなかったが、とにかく我々は山頂めざし、進むことにした。
 もちろん理由などない。
「そこに山があるから!」
 多分それだけの理由しか無かったと思う。

 その緩やかな山腹には、むき出しの赤茶けた地面が続いていた。
 そこをしばらく進み山の中腹に達すると、突然、地面の一部が小高い丘のように盛り上がっていた。
 その上に立つと、そこからクレーターのようなものが見えた。
 つまり我々が発見したその小高い丘は、どうやらそのクレーターの周囲の、土の盛り上がりであったようだ。

 クレーターはその深さ、周囲の盛り上がりの様子から、何かが衝突して形成されたであろうことは、容易に想像できた。
 しかしクレーターは通常円形になるものである。
 ところがこのクレーターはおおよそ縦が2、横が1の割合という、珍しいものだった。
 不思議だった。

 と、そのとき、巨大な長円形の物体が、物凄い勢いで我々の頭上に迫ってきた。
 それはあまりにも速く、我々には逃げる間もなかった。
 そしてこんな物体が我々の上に落ちてきたら、一巻の終わりだ。
 だが逃げる間もない以上、その場にじっとしているのが賢明だろう。
 我々はそう考え、その場にとどまり、物体をつぶさに観察した。

 良く見るとその物体も、おおよそ縦が2、横が1の割合で、クレーターと同様だった。
 しかもその形は、はっきり言って、スパイクの靴底のように見えた。
 ご丁寧に六本の鋲まで見えたし、それが「左足」だということさえわかった。
 そしてそのスパイクは、どうやらそのクレーターめがけ、ものすごい勢いで向かっているようだった。

 やがて、そのスパイクはクレーターを覆うようになり、そのままクレーターにぴったりとはまるように、どしゃんと落下した。
 それからものすごい音と振動がおこり、大量の土砂が噴き出してきた。
 我々はあわてて腹這いになったが、全身泥だらけだ。

 そしてその土煙が収まり我々が頭上を見上げると、今度は巨大な手のような形の物体が、観覧車のように回転しながら我々に向って降りてきたのだ。
 一難去ってまた一難。
 だけど、その巨大な手のような物体は落下せず、我々の頭上を通り過ぎた。
 そしてその後に突風が吹き、我々はもう一度伏せたが、風はぐに収まった。

 それから我々が上空を見上げると、今度はこの山の山頂の六、七倍はあろうかという遥か上空を、巨大な球形の物体が高速度で回転しつつ、轟音を上げながら大変な勢いで飛び去って行くのが見た。

 一体このクレーターは何?
 スパイクのような物体は?
 観覧車のように回転して頭上を通過した手のような形の物体は?
 それに、高速度で飛び去って行った球形の物体は?
 何が何だか、さっぱり分らない!

 それからしばらくして、遥か遠くから「バシッ!」という音がして、その直後、人間とも思えないような大声がした。
 その声はこう言っているように聞こえた。
「ストラ~~~イク!」

 そうそう。
 こんなことやっている場合じゃなかった。
 早く食べ物を見つけて巣に持って帰らなきゃ。
 女王アリ様がお待ちだ

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