出来損ないの「出来損ないのタイムマシン」

文字数 1,616文字

 本作品も前作同様「出来損ないのタイムマシン」シリーズで、設定も同様。
 その辺のことをご了解の上、読みたい方はお読み頂きたい。
 要約するとこのタイムマシンの作用は、金属で囲まれた(金網でもよい)一定の空間が、外部に対してある一定の「時」に留まるということだ。
 そのことを応用し、画期的な「寝具」が発売されたのだった。
 その直後からこの出来損ないの作品は始まる。
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 そして程なく、その「外部時間0分で熟睡」という触れ込みで、件の寝具は発売され、大人気を博した。
 もちろんその寝具は基本的に金網で囲まれているのであるが、それは寝袋のような構造で、表面は金属製のメッシュで覆われるというイメージだ。
 そして内部にコントローラーがあり、寝る人はこれでお好みの時間にセットし、外部時間0分で、10時間とか、好きなだけ爆睡できる。寝放題なのだ。
 それからもちろん、顔の部分は金属のメッシュで覆われているのみで、だからもちろん息は出来る。(当たり前か)

 それからしばらくして、とある男がこの寝具を購入し、徹底的に分解して内部を調べつくした。
 そしてその「タイムマシン機能」を発見してしまったのだ。
 まあ当たり前といえば当たり前か。
 外部時間0とか、そういうからくりだから、タイムマシンの類だと思わない方がおかしい。
 で、その男はある素晴らしいアイディアを思いつき…

 それからその男は、その出来損ないのタイムマシンのコントローラー等一式を、とある、あまり人気のない、というか倒産寸前のテーマパークの社長に見せたのだ。
 そしてその機能について口角泡を飛ばしながら詳しく説明し、起死回生の素晴らしいアイディアを社長にまくしたてた。

 つまりこのテーマパークを金属のフェンスで取り囲み、その出来損ないのタイムマシンを作動させるとどうなるか?
 つまりそうすると、そのテーマパークは、外部に対して一定の時間に留まり続けるのである。
 いいかえると、テーマパーク内では当たり前のように時が過ぎていても、外の世界では時が止まっている。そしてそこでは永遠に遊んでいられる。まるでネバーランドのような…
 それで、例えば朝十時に開園して、一定の客が入場したらタイムマシンを作動させる。
 もちろんそうすると外の時が止まり、入場門目前の人々は固まり、それですでに入場した人たちはテーマパークで遊び続ける。

 そして散々、というか一日遊んで、それからやがて人々が退場門から出て…
 ありゃりゃ、退場門から出ていきなり、そこでは「時」が止まっているから、出た人はいきなり固まってしまうんじゃ? 

「つまり退場門付近は人々の渋滞が発生するだんべぇ」
 途中まで話を聞いた社長は、あきれてこう切り出した。

「あんさんこれじゃ何のメリットもないだんべぇ。そもそも外の時間がどうあれあんだ、園内の従業員の労働時間は同じだんべぇ。そすて遊具のメンデどが、いんろいろ考えだら、ぜんぜん意味あんめえ」
 そういう訳で、肝心要めのオチが落ちず、したがってこのショートショートは残念ながら豪快に「出来損ない」に終わってしまったのである。
 
 ところでその後、このテーマパークはあっさり倒産し、やがて更地になり、それを市の担当者が足元を見て、バカみたいな値段で買い上げ、そこに余った予算で野球場を建設し、しかも例の男にそそのかされ、件のタイムマシン装置を設置したのである。
 そうすると当然、試合前の練習、グラウンド整備等も含め、外部時間0で野球の試合ができる。そして選手、観衆などは、迅速にやれば30分ほどで入れ替われるので、外部時間1時間あたり2試合。ナイター設備もあり、朝8時から夜10時までで、一日で何と28試合も消化できる。
 そういうわけで高校野球、プロ野球と、この球場はその後、大車輪の活躍をし、大変な収益を上げたらしい。


 次もその筋のシリーズですので

  
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