バスタブ

文字数 352文字

バスタブを (なが)めて(おも)う 永遠論(えいえんろん)

<解説>

 政治哲学者ハンナ・アーレントの著書「人間の条件」によれば、ソクラテスがすべての哲学者の中でも特別視されるのは、彼が自身の思想を記録しなかったからだというのです。

 アーレントの考えによると、「思想を永遠に残すため記録しようとしたならば、逆に永遠性は失われてしまう」という、ジレンマが発生するのですね。

 バスタブを掃除してお湯を張っているとき、そのことを思い出し、「俺はいま水を保存しようとしているが、保存したこの水はすでに『風呂の湯』であって、『水』ではないのではないだろうか」と思索(しさく)した次第(しだい)です。

「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらじ」

 表現は違えど、本質は等価ではないのか?

 たかが風呂の湯を張るという行為に、永遠論を堪能でき、よき週末となりました。
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