蜘蛛

文字数 434文字

()(かげ)に やって()るのは 八本足(はっぽんあし)

<解説>

 数年前のある夜のことです。

 当時、精神的にかなり追いつめられていたわたしは、深夜の自室で独り、すっかりうなだれていました。

 すると、小指の先ほどの小さなクモが、ゆっくりとこちらに歩いてくるのです。

 そのクモはわたしの目の前で足を止め、なにやらこちらを観察しているように見えます。

 なにせ不安定な状態でしたから、わたしは心の中でなにげなく、そのクモに語りかけたのです。

「もし俺に活路を与えてくれたら、生涯(しょうがい)クモは大切にするよ」

 およそそんな内容でした。

 するとそのクモは「いいよ」とでも言わんばかりに体の向きを変え、部屋のどこかに消え去ったのです。

 あの出来事はいったいなんだったのか?

 少なくともそれ以来、クモへの殺生(せっしょう)はしないように気を使っていますが、不安な気持ちになったときはよく、あのクモのことを思い出すのです。
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