文字数 397文字

(ひぐらし)に (はか)()われて ()(かえ)

<解説>

 諸事情で入院することになったときに()んだものです。

 入院中はさぞ退屈だろうと、ひまつぶし対策に持っていく本を選んでいたんです。

 そこで泉鏡花の「外科室」が目に()まり、ブラック・ジョークのようですが、カバンに入れました。

 脳の状態をチェックするための検査入院という形だったので、痛いことはおそらくしなくて済むとわかっていたのですが、無事を祈る意味で、先祖の墓前(ぼぜん)に手をあわせてきたんです。

 それは夕方のことだったんですが、ちょうどヒグラシが一斉(いっせい)に鳴きはじめたんですね。

 あたかも「とっとと帰れ」と言っているように聞こえ、墓所(はかしょ)をあとにした次第です。

 「家に帰る」の部分は、「何事もなく退院して、家に帰れますように」という気持ちも込めてみました。
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