第102話 部活の夏が、始まる。

文字数 1,078文字

「うぅ、自分が書いてるジャンルがどのジャンルにカテゴライズされるか、さっぱりわからないや!」

 僕は自分の机を手で叩いた。
 部室。日が暮れる時間帯である。
 暑い中、壊れたクーラーが軋みながら冷風もどきを部室に送り込む。

 団扇でぱたぱた自分の首元に風を送っている佐々山さんは、だらしなく机の上に座り、足を椅子に乗せていた。
 その容姿は、夏のイリュージョンなのか、ちょっぴりえろい。

 萌木部長はパソコンのキーボードのエンターキーをバチン、と叩いて、
「状況完了!」
 と、意味不明にしか思えないなにかのジャーゴンを使って、短編が完成したのを宣言する。

 青島くんと月天くんは、まだ各々作業中。

「そういえばさぁ、青島くん、月天くん。確か、きみたちは連名になって二人組で小説を書いていくことにするんだっけ?」
 と、僕。

「そーっすねぇ」
 そっけなく返す青島くんは、作業にまた戻った。

 今度は部長に突っかかってみる僕。
「いいですよねー、部長はよどみなくタイプして原稿をつくれるから」
「なんだ? 皮肉か、山田」
「ち、違いますよー。本当に凄いと思ってるんです。僕、遅筆だから」
 そこに佐々山さんが。
「遅漏、の間違いじゃないかしら」
「違うよ!」
「失礼致し、早漏」
「怒るよ、佐々山さん!」

 青島くんが椅子から身体をのけぞらせ、こっちを見る。
「え? ついに付き合い始めたんすか。おめでとうございます」
「ちっがーう!」
 否定する僕。
「山田くんは男のケツにしか興味ないものね」
「なに、しかも僕、〈攻め〉設定なの!?」
「へたれ攻め、ね!」
 手に持った団扇でビシィッと、僕を指さす。



「あぢーーーー」
 青島くんが手のひらで顔を覆う。
 月天くんもそれにノって
「夫婦漫才も面白いけど、この暑さじゃ楽しさ半減だぜぇ」
 と、天井を仰ぐ。



 部長が言う。
「もうすぐ夏休みだが、部活は毎日あるぞ。しかも、午前から午後まで。課外学習を受ける時はここから離れるが、基本は、この部室が夏休みは自分たちの教室となる。合宿もあるし、みんな、本気で頑張ろう」

 ついに、始まるのか、真夏の部活が。

 部長は続ける。
「部誌の特別版の作成、新人賞への長編投稿。この二つを全員がこなすことになる。その他、海や山や街に出たりもする予定だし、合宿はキャンプの予定だ。よろしくな」


「最高の夏にしましょうぜ、先輩方」
 青島くんはそう言うと、へへへ、と照れながら鼻をこすった。



 部活の夏が、始まる。




〈了〉
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