第8話 超弦理論のテツガク談義

文字数 688文字

 世界が振動して、時間は動く。

 クォークはひもで、超弦理論が見せる世界は世界の震えの振る舞いだ。

「そういやピアノって弦楽器でもあるんだよな」

「ああ? なんだぁ? 知識ぷち披露してなにしてーんだ、青島」


 月天はおれを睨むと、殴る姿勢に入っている。

「すぐにキレるのはよせよ、月天」
 拳を下ろす月天。

「ふん」

 それからそっぽを向いた。

「この宇宙の全てはひもで出きてるって話があるんだ。その震え方の性質の異なりが合わさって、複雑な世界になる。ひもの一本一本の震え方が違うんだよ」

「だからなにが言いてぇんだ? さっきからよ」


 おれは空を見上げる。もう夜だ。星が光っている。

「おれたちはシンプルに世界を見つめるべきだ。数学者が数式で物事をシンプルにまとめようと企てるように」

「おめーは文系だろうがよ」

「そう。文系の全てはフィクション。法律だって、フィクションだともいえる」

「テツガク談義してる場合でもなさそうだぜ」

「だな」



 おれたちの前には他の高校の不良が鉄パイプなんか持って集まってくる。


「で。青島。ひとの脳みそを『震わせる』と、どうなるんだっけか」

「試してみよう」

「おうよ」



 そうしていつものようにバトルが始まる。

 これだだからおれはいつも部活に迷惑をかけないよう、幽霊部員になっている。

 文学に喧嘩はつきものだけど、文芸部には続いてほしいからね。争いごとに関わるのはおれだけでいい。




 ……でも明日は部室に寄ろう。
 今目の前で構えているこいつらを倒せたら。


〈了〉
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