第9話 ダメ人間グランプリ
文字数 547文字
「そういや、九十年代頃までは確かにあった『ダメ人間グランプリ』はどうなったんすかね、萌木部長」
「おれに話題を振ってこられてもだな……。だいたい山田、おまえの言う『ダメ人間グランプリ』ってなんだ?」
「やだなぁ、部長。ここ文芸部なんですから、もちろん『ダメ人間グランプリ』って純文学のことですよ」
「……山田、おまえ暗殺されるぞ、そういうこと言ってると。だよなぁ、佐々山さん」
「部長もわたしに話題を振らないで! で、山田くん。『ダメ人間グランプリ』、続けて欲しかったわけ? 正直、その手のタイプの文豪は『はた迷惑』なだけよ?」
「いや、でもこの国、エンタメに偏重しすぎでしょう」
「日本のお国柄だと言えるわ。そのダメ人間の筆頭であろう太宰だって探偵小説書いてたわ、売れたいからって、別名義で」
「『人間失格』も主人公、漫画家だもんな。逆にエンタメエンタメ言ってるのは純文学サイドの奴らなのかもしれないな」
「そうでしょうよ。普通の人は目の中に純文学なんて入らないものよ。『ない』ものとして処理されてるわ。間違いなく。そうは思わない?」
「山田も佐々山も……。これはすでにこの文芸部自体否定しているのではなかろうか」
「然り!」
「然り、じゃねーよ!」
〈了〉
「おれに話題を振ってこられてもだな……。だいたい山田、おまえの言う『ダメ人間グランプリ』ってなんだ?」
「やだなぁ、部長。ここ文芸部なんですから、もちろん『ダメ人間グランプリ』って純文学のことですよ」
「……山田、おまえ暗殺されるぞ、そういうこと言ってると。だよなぁ、佐々山さん」
「部長もわたしに話題を振らないで! で、山田くん。『ダメ人間グランプリ』、続けて欲しかったわけ? 正直、その手のタイプの文豪は『はた迷惑』なだけよ?」
「いや、でもこの国、エンタメに偏重しすぎでしょう」
「日本のお国柄だと言えるわ。そのダメ人間の筆頭であろう太宰だって探偵小説書いてたわ、売れたいからって、別名義で」
「『人間失格』も主人公、漫画家だもんな。逆にエンタメエンタメ言ってるのは純文学サイドの奴らなのかもしれないな」
「そうでしょうよ。普通の人は目の中に純文学なんて入らないものよ。『ない』ものとして処理されてるわ。間違いなく。そうは思わない?」
「山田も佐々山も……。これはすでにこの文芸部自体否定しているのではなかろうか」
「然り!」
「然り、じゃねーよ!」
〈了〉