第44話 自分内ルール、自分縛り

文字数 1,263文字

「部長」

「なんだ、山田」

「なんで青島くんは書くの速いのかなぁ、って」

「ん?」

「僕は、どういう言葉を使っていいか、わからない」

「どういう言葉って、どういう言葉のことを言っているんだ?」

「漢字を開いたり、平仮名か片仮名か。英語のスペルは全角か半角か、とか。表記ゆれしないように書くっていうのも、作品ごとに変えるものと、全作出来れば共通して書きたい、などの、そういうルールをどうしていいか、決まらないんです」

「ああ。自分内ルールか。自分縛りでもあるな」

「文学って括りで考えるとかなり自由度は増すけど、それが個性に繋がらないものだったら読みづらいだけだから排除しなきゃならないし」

「ウェブと紙媒体だったらかなり大きく改行をする、しないの問題もあるな。ラノベと一般小説だと、やはりこれも改行をどの頻度でするか、また、段落を増やすか減らすかで、軽いか重いか変わってくるし」

「青島くんの書いた小説を読むと、そこが統一されてる感があるんですよー、僕より年下なのにぃ」

「その問題は、答えがもう出てるぞ」

「出てる? どこに」

「山田の今喋った内容のなかに、だ」

「ど、どういうことですか」





















ーーーーーーーーーー読者への挑戦状。
          その『答え』とは?
          答えを導き出す素材はすでに全て揃っている。
          さて。諸君は解けるかな? -----------


















「で。その答えってなんです、萌木部長」

「最初に山田が言った台詞が答えだ。『なんで青島くんは書くの速いのか』と言っていたが、『書くのが速い』、言い換えれば『書く文章量が多い』つまり『完成させた作品が多い』」

「まだ僕にはさっぱりです」

「はぁ。だから、『アウトプットの量が多いということはその問題はクリアしている、もしくは悩まない。書いてる中でその問題はクリアしているから悩まないか、興味がないから悩まない』」

「ふむふむ」

「アウトプットは〈推敲〉も含めて執筆だ。書くのと推敲で手直しする〈数をこなしている〉ので、その中ですでに悩まない程度には、本人の中では統一されている。読者も、統一した風に感じているのは、山田がそう感じたのだから、そうなのだろう」

「まだわかりません! すみませんが、答えをひとことでお願いします!」






「〈場数を踏んだ〉から、自分内ルールはその数を打っている間に悩んで考えて解決している、が正解だ。答え。〈アウトプットの場数を踏め。自分なりのルールが出来上がるから。ルールさえ決まれば、それに則って書ける。余計なことを考える時間は減るから、結果、速く書くことが出来る〉だ。」





「は?」

「場数を踏め。たわごとは長編の新人賞に送れる長さの長編小説を100編書いてから言え。それが答えだ」

「うわぁ。……ひっどい」

「そんなもんだよ」






〈了〉
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