第19話 プロット書くの、苦手です!

文字数 999文字

「部長! プロット書くの、苦手です!」

「おまえはそういう奴だよ、青島。ストレートになにを言ってるんだか。山田を見てみろ。プロットなんかつくらないで、ぶっつけ本番で書いてるぞ、小説」

「あ! ホントだ! 山田先輩、すげぇ!」

「すげぇ、じゃないよ、青島くん。僕だっていつもネタに困り小説書いてるけど、文章は書かなきゃ始まらない。そして、終わりまで書かなければ、それは小説として認められない」

「テツガクっすね、先輩」

「ふふん。どうだ」

「山田先輩の名前が春樹だっていうのがよくわかりました、山田春樹先輩!」

「僕を下の名前で呼ぶなー!」



「ふむ。山田。そんなに怒ることじゃない。もしかしたら青島は良いことを言ったかもしれないぞ。村上春樹の一番最初の『鼠三部作』は、おそらく、おおまかな起承転結のプロットはあっただろうが、どう読んでも自由にネタをぶち込んだ風にしか読めない。おれが文章を読むのが下手だからなのかもしれないが。まさに今、山田がやっているように、パソコンの前に座ったら『とりあえず続きを書く。だがその続きとはなんの続きなのかはわからない』って思考による実践である可能性すらあるだろう。実際の現場なんて、そんなものだ」



「萌木部長、村上春樹先生にすごく失礼ですよ! それに『そんなものだ』って、カート・ヴォネガット風な言い回しをすればなんでもそれっぽく思えると思ったら大間違いです! あと僕も、すこしくらいは考えて物書いてます! プロットつくらないけど!」



「あ、部長に先輩。今日の部活は、パスタを茹でるってことにしませんか?」

「ナイスアイディアだ、青島! ねじまき鳥になろう」

「はぁ。青島くんもなんかディスってないか? 部長までもそんなノリでいいんですか。……いや、でもこれだけネタになるって、やっぱり村上春樹先生はすごいな」

「ネタになりまくるから外国に住んでるんじゃないっすか?」


「あー、なんで村上春樹を語り出すと止まらなくなるのか。文学の力だな、こりゃ」

「延々続けるかパスタ茹でるっす。たぶん女性から電話かかってきたりなんとかノボル氏からコンタクトがあるっす」

「全員ハルキストだったのか、うちの部活……」

「佐々山はあの性表現にもの申すだろうが、な」




「もういいです……。パスタ茹でましょう…………」



〈了〉
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