第101話 禁色

文字数 832文字

 県下怨霊八貴族。位階第四位〈卯の花の襲〉、位階第三位〈藤の襲〉を撃破したおれと 月天は、位階第一位〈桜の襲〉と対峙していた。

 桜の襲のバトルフィールドに巻き込まれたおれは拳を固め、月天もパワーアップしたバッティングの力を持ってバトルフィールドに臨んだ。

 が。
 突然の落雷が、間近に直撃した。
 落雷に打たれたのは、桜の襲だった。


「どういうこった。桜の襲の奴、自分のバトルフィールドが誰かに干渉されたってのか?」
 月天が思わず口にする。


 落雷に打たれた桜の襲が、真っ黒焦げになって、その場に、立っている。その身体の真ん中に、背後からぶっすりと手を差し込み、貫通させてとどめを刺す人物。
 考えるまでもなく、それは落雷を起こした人物だった。
 とどめを刺された桜の襲は、真っ黒焦げになりながら〈散っていく〉。黒い桜の花びらとして。


 位階第一位の襲を倒したその人物は……。
「……杜若…………水姫、か」
 月天が息をのむ。
 おれも、その強大な力に、身体が震える。こんな奴に勝てる気がしない。

「にゃっは。そう。あたしが〈重式目(かさねしきもく)〉のさらに上、最上位にいる〈禁色(きんじき)〉よ。〈ゆるいしろ〉である〈襲〉に対置する、着てはいけない色、〈禁色〉なの。よろしくぅー」


 禁色……。杜若水姫。うちの学校のトラブルメイカーとして名をはせる三年生にして、生徒会長の親友。

「まあまあ、茶番も楽しめたでしょ、青島くんと月天くん。萌木によろしくねー」


 はにかむ〈禁色〉は、バトルフィールドとともに消えた。
 異空間がもとに戻る。



「どういうこった?」
 と、おれ。
「さぁ、こっちが訊きたいぜ」
 月天は肩をすくめる。



「茶番……ねぇ。笑える」
 月天は、もしくはそう言うしかなかったのかもしれない。
 そして、おれたちは日常に戻る。
 なにか言い知れぬわだかまりを残して。





〈了:ReStart〉
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