『ゴッド』からのメッセージと贈り物

文字数 2,486文字

 「あなた方は、今、この世に生きる

人間たち。


 過ぎ去った過去にいつまでも(とら)われる必要

はないのです。


 なぜなら。。。


 それに(こだわ)らずともあなた方の心の中に

ずっと存在している同じ魂を持つ前世が、

いつも一番そばで、あなた方を見護(みまも)り、

助言してくれるからです。


 過去を生きる中で、多くを学び、そして

経験して来たあなた方の前世。


 その前世が、すべてを教えてくれます。


 過去から学べることもあるでしょう。


 過去を捨てる必要もあるでしょう。


 前世とは、あなた方にとっての一番の

味方。


 心に尋ねれば、その前世が答えを教えて

くれるのです。





 大切なのは、≪今≫を生きている

あなた方自身。


 そしてここからどう生きていくか。。。


 それを決めるのも、またあなた方自身。


 それこそが重要なことなのです。


 自らを信じなさい。


 さすれば、(おの)ずと進むべき道が見つかり

ましょう。」




 その『ゴッド』の(いき)(はか)らいと心に響く
ようなメッセージを授かり、導光は感無量
であった。




 「名を導光とおっしゃいましたね。」


 「はっ、はい。『ゴッド』様。」


 いきなり『ゴッド』から自分の名を
呼ばれ、導光は、少し緊張した面持(おもも)ちで
答えた。


 「実は、『マリア』から、今回の件を

あなたに依頼すると聞いた時、私は、

あなたの人と成りを拝見させていただき

ました。


 驚いたことに、お人柄は『マニュエル』

そっくり。


 あなたもまた、人を救うことを使命として

この世に生を受けたお方。


 あなたに依頼したいという『マリア』の

申し出を、私は即座に許可いたしました。


 今、この場ではっきりと申し上げます。


 そう決断して本当によかったと。


 『マニュエル』も『アレン』も、そして

『マニュエル』の家族もみな、それぞれの

想いを果たすことができたのは、ひとえに

あなたのおかげ。


 ありがとうございました。」


 「いえ。。。そんなお礼など。。。


 私は、今回とても貴重な舞台に立たせて

いただいたと思っております。


 何より今、その舞台の主役であるすべての

方々とこの上ない良き縁を結ぶことができた

のですから。


 私にとって、それが何よりの宝です。」



 「ほほほほ。。。


 あなたは本当に誠実で謙虚なお方ですね。


 今日は、あなたにも贈り物を用意してきた

のですよ。」


 「えっ? 私に。。。?」


 「ええ。


 『デスティニイ』、例のものを。。。」


 「はい。」


 『ゴッド』から指示された
『デスティニイ』は、自らが(まと)っている
マントに右手を入れ、箱を取り出した。


 (まぶ)しいほどの白金色(しろかねいろ)に輝く円形の箱。


 直径八センチほどであろうか?


 「導光殿にそれを。。。」


「かしこまりました。『ゴッド』様。」





 『デスティニイ』からその箱を受け取った
瞬間。。。



 一体の偉大な《龍》の姿が導光の脳裏に
浮かんだ。


 かつて一度も視たことのない色合いの
《龍》。


 その周囲は、まるでプラチナの(ごと)白金(しろかね)
光に包まれている。


 何と神々(こうごう)しいことか。


 思わずひれ伏してしまうほどの迫り来る
ような威厳。


 全身に鳥肌が立つほどの驚異の存在感。




 「あなたは、《龍》と大へん(ゆかり)ありし

お方。


 それが、《龍》と関係のあるものであると

いうことは、もうおわかりでしょう。


 開けてみてください。」


 「はい。」

 そう答えた導光の手は、緊張のあまり
ぶるぶると震えていた。


 そして、まるですぐ目の前にその偉大なる
《龍》がいるかの(ごと)く、畏怖(いふ)の念を()って
そっと箱のふたを開けたのである。






 「こっ。。。これは。。。


 もしや。。。《龍の(うろこ)》。。。?」


 「そのとおりです。」


 導光が『ゴッド』から受け取ったものは、
まさしく《龍の(うろこ)》であった。


 《龍》が、幸せになってほしいと願う者に
のみ授ける《龍の(うろこ)》。


 その《鱗》を手にした者は、必ず幸せに
なれると言い伝えられている。




 「もうかなり昔のこと。


 二百年は経っているでしょうか?


 私は、天界で旅の途中の《龍》と出会った

のです。


 聞くところによると、理由(わけ)あって、何もの

かを追っている途中であったとか。


 だいぶ疲労困憊(ひろうこんぱい)のご様子でした。


 天界には、その疲れを癒やすために立ち

寄ったとおっしゃっていました。


 その《鱗》は、その時にその《龍》から

いただいたもの。


 「「自分だけでは多くの人々を幸せにする

ことはできない。


 (さち)の種となるこの《鱗》をあなたに

託したい。。。


 この《鱗》で多くの人々に幸をもたら

してほしい。」」と。


 そうおっしゃっていました。


 ですが、(さち)といっても、それはひとつに

(とど)まらない。


 人々の幸せは、一人一人みな異なって

います。


 そして、本来、人々に幸せをもたらすこと

ができるのは、人々だけなのです。


 もちろん、私たちも《神》として、人々の

幸せのために尽力することに変わりはありま

せん。


 それが、私たち《神々》にとって第一の

使命ですから。


 《龍の鱗》を授けられる者は、自らの幸せ

だけではなく、多くの人々の幸せをも願う者

のみ。


 ですから、この《鱗》は、私が持って

いるより、あなたのようなお方が持って

いる方が。。。


 迷える人々を救うことを天命の職として

生きていらっしゃるあなたに託した方が、

より多くの人々を幸せにしてくれるのでは

ないか。。。


 そう思い、あなたにそれをお渡しすること

にいたしました。


 その《鱗》は、多くの幸の中でも《繁栄》

をもたらす《鱗》です。


 どうか、あなたの一族がこれからも繁栄

されるよう、そして、あなたがこの《鱗》で

多くの人々に《繁栄》をもたらせるよう

祈っております。」


 「なんと。。。もったいないお言葉。。。


 『ゴッド』様。。。ありがとうございます。


 ご期待に添えるよう、この昇龍 導光、

精一杯務めさせていただきます。」


 「よろしくお願いいたします。


 たしか。。。あなたには、そこに

いらっしゃるご息女のほかにもうお一方(ひとかた)

ご子息がいらっしゃいますよね?」


 「はい。『縁成(えんじょう)』という息子が

おります。」


 「その《鱗》を私に贈ってくださった

《龍》は、あなたのご子息と深き(ゆかり)がある

ようですよ。」


 「えっ? 『縁成』と。。。?」


 「ええ。 どのようなご縁なのか。。。


 それは、いずれおわかりになる時がやって

来るでしょう。」

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登場人物紹介

昇龍 導光《しょうりゅう どうこう》


代々続く祈祷師の家系に生まれた。昇龍家第四十八代当主。五十歳。

非常に高い霊能力を持つ。

ダンディで背が高く、スポーツマン。 

物腰柔らかで一見祈祷師には見えない。

導光が愛するものは何といっても龍と家族そしてスイーツ。

持って生まれた類まれなる霊能力と格の高い魂で、様々な視えざる存在と対峙しながら

迷える人々を幸福へ導くことを天命の職と自覚し、日々精進を重ねるまさに正統派の祈祷師。

昇龍 輝羽《しょうりゅう てるは》


導光の娘。ニ十歳。 

聖宝德学園大学 国際文化学部二年生。両親譲りの非常に高い霊能力の持ち主。

自分の霊能力をひけらかすこともなく、持って生まれたその力に感謝し、

将来は父のような祈祷師になりたいと思っている。

龍と月に縁がある。

龍を愛する気持ちは父の導光に劣らない。

穏やかな性格だが、我が道を行くタイプ。

自分の人生は自分で切り拓くがモットーで、誰の指図も受けないという頑固な面がある。 

浄魂鳥《じょうこんちょう》ケツァール   /   マニュエル


普通の人には見えない、いわゆる霊鳥。

五百年前、『マニュエル』という名の人間としてある国に生きた前世を持つ。

あまりにも壮絶な過去を背負ったがために転生できず、

ある想いを果たすため『浄魂鳥』としてこの世に存在し、

その時をずっと待ち続けてきた。

花畑 満《はなばたけ みちる》 / アレン


二十歳。『輝羽』と同じ大学で同じ学部の同級生。

日本人離れした端正な顔立ちの美男子。

五百年前、人間であった『浄魂鳥』と同じ村に住んでいた『アレン』という名の若者の前世を持つ。

十五年前に亡くなった叔母の遺言がすべてを明らかにするカギを握る。

野原 美咲《のばら みさき》/ 満の伯母 


十五歳。聖宝德学園大学付属中学三年バラ組。

十五年前に亡くなった『花畑 満』《はなばたけ みちる》の叔母の前世を持つ。

その時の記憶を持ったまま生まれてきた。

『満』《みちる》同様日本人離れした顔立ちの超美人。積極的な性格。

赤いバラの花の女神 マリア


とにかく美しいものが大好きな女神。

導光の元を訪れ、ある国にいる『浄魂鳥』を日本に連れて来てほしいと依頼する。

すべての出来事はこの依頼から始まった。

その『浄魂鳥』の想いを果たすことができれば、自分が見護っていたある人も

幸せになれるのだと導光に訴える。

白いバラの花の男神 ローマ


『赤いバラの花の女神 マリア』の許婚《いいなずけ》。

いつも『マリア』に振り回されている『マリア』一筋の男神。

ある事情で結婚を先延ばしにされてしまう。

天の神から頼まれ、導光の家に届け物をする。

それは『浄魂鳥』と深い関わりのあるものなのだが。。。

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