その人こそ、逢いたかった『アレン』

文字数 884文字

 「お父さん。


 紹介したいのはこの人。」


 『輝羽』の隣りに立っている男性を
『マニュエル』が視た瞬間。


 間仕切りに止まっていた『マニュエル』
は、その男性の周りを飛びながらぐるぐると
回り始めた。


 「導光さま、『アレン』です。


 やっと、やっと()えました。」


 五百年ぶりに『アレン』に再会できた
『マニュエル』。


 はしゃぐ『マニュエル』の一つしかない
片目は、やっと『アレン』に逢えた(うれ)しさ
からキラキラと輝いていた。


 ずっと蒼白(そうはく)だった『マニュエル』の顔全体
には赤みが差し、しばらくじっと『アレン』
を見つめる輝くその片目からは、感激のあま
り、次第に(うれ)し涙が頬を伝って流れ落ちてい
った。


 「『アレン』。。。 『アレン』。。。


  『アレン』。。。」


 涙をボロボロと流しながら『アレン』の名
を叫び続ける『マニュエル』。





 その『マニュエル』が、『アレン』だと叫
んでいる人。


 『輝羽』が連れて来たその男性の名は、


 『花畑(はなばたけ)  (みちる)』。


 『輝羽』と同じ聖宝德(せいほうとく) 学園大学に通う
大学生で、(おな)い年の二十歳(はたち)ある。


 学部も『輝羽』と同じ国際文化学部の
同級生。


 実は、『輝羽』には、だいぶ前からいつも
ニッコリ微笑(ほほえ)みながら『(みちる)』に寄り添ってい
る『赤いバラの花の女神  マリア』の姿が
視えていた。


 最初は、『輝羽』もその姿が視えていても気
にしないようにしていたのだが。


 ある日、その『マリア』に話しかけられた
のだと言う。


 「お父さん。


 すでに、事情はすべて『マリア』から聞い

ているの。


 実はもう、(みちる)君にもそのことは話してある

のよ。」



 「『輝羽』ちゃんのお父さんですね。


 はじめまして。


 『花畑(はなばたけ)   (みちる)』と申します。


 この間、話はすべて聞きました。


 初めは、何を言われているのかまったく訳

がわからなくて。


 でも『輝羽』ちゃんに、

「「あなたのそばには、いつも絶世の美女が

いるわ。


『赤いバラの花の女神  マリア』。


 その《女神》は、あなたのことが本当に

好きなのよ。」」


 と言われた時、ハッとしたんです。


 実は今日は僕の誕生日なんですが。


 昨日。。。誕生日の前日に。。。


 父から、ある遺言を手渡されたんです。」



 「遺言?」


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登場人物紹介

昇龍 導光《しょうりゅう どうこう》


代々続く祈祷師の家系に生まれた。昇龍家第四十八代当主。五十歳。

非常に高い霊能力を持つ。

ダンディで背が高く、スポーツマン。 

物腰柔らかで一見祈祷師には見えない。

導光が愛するものは何といっても龍と家族そしてスイーツ。

持って生まれた類まれなる霊能力と格の高い魂で、様々な視えざる存在と対峙しながら

迷える人々を幸福へ導くことを天命の職と自覚し、日々精進を重ねるまさに正統派の祈祷師。

昇龍 輝羽《しょうりゅう てるは》


導光の娘。ニ十歳。 

聖宝德学園大学 国際文化学部二年生。両親譲りの非常に高い霊能力の持ち主。

自分の霊能力をひけらかすこともなく、持って生まれたその力に感謝し、

将来は父のような祈祷師になりたいと思っている。

龍と月に縁がある。

龍を愛する気持ちは父の導光に劣らない。

穏やかな性格だが、我が道を行くタイプ。

自分の人生は自分で切り拓くがモットーで、誰の指図も受けないという頑固な面がある。 

浄魂鳥《じょうこんちょう》ケツァール   /   マニュエル


普通の人には見えない、いわゆる霊鳥。

五百年前、『マニュエル』という名の人間としてある国に生きた前世を持つ。

あまりにも壮絶な過去を背負ったがために転生できず、

ある想いを果たすため『浄魂鳥』としてこの世に存在し、

その時をずっと待ち続けてきた。

花畑 満《はなばたけ みちる》 / アレン


二十歳。『輝羽』と同じ大学で同じ学部の同級生。

日本人離れした端正な顔立ちの美男子。

五百年前、人間であった『浄魂鳥』と同じ村に住んでいた『アレン』という名の若者の前世を持つ。

十五年前に亡くなった叔母の遺言がすべてを明らかにするカギを握る。

野原 美咲《のばら みさき》/ 満の伯母 


十五歳。聖宝德学園大学付属中学三年バラ組。

十五年前に亡くなった『花畑 満』《はなばたけ みちる》の叔母の前世を持つ。

その時の記憶を持ったまま生まれてきた。

『満』《みちる》同様日本人離れした顔立ちの超美人。積極的な性格。

赤いバラの花の女神 マリア


とにかく美しいものが大好きな女神。

導光の元を訪れ、ある国にいる『浄魂鳥』を日本に連れて来てほしいと依頼する。

すべての出来事はこの依頼から始まった。

その『浄魂鳥』の想いを果たすことができれば、自分が見護っていたある人も

幸せになれるのだと導光に訴える。

白いバラの花の男神 ローマ


『赤いバラの花の女神 マリア』の許婚《いいなずけ》。

いつも『マリア』に振り回されている『マリア』一筋の男神。

ある事情で結婚を先延ばしにされてしまう。

天の神から頼まれ、導光の家に届け物をする。

それは『浄魂鳥』と深い関わりのあるものなのだが。。。

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