対峙

文字数 1,192文字

 「ハハハハハハハハハ。。。

 ワッハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ。。。

 ハッハッハッハッハッハッハッハッッ。。。。。」

 
 背筋が凍りつくほどの戦慄(せんりつ)を感じる
恐ろしい笑い声。


 悪魔『サタン』が、その場にいる全員を
にらみつけた。


 その、今にも飛び出しそうなギョロッと
した目で。


 (なんて恐ろしい姿なの。。。


 今までに視たこともない()け物。。。


 心が。。。


 この()け物には心がない。


 胸が。。。


 心があるはずの胸が[邪悪]な気で

()め尽くされてる。


 許せない。。。


 こんなに優しさにあふれている

『マニュエル』をどうしてそこまで苦しめ

るの。。。)

 『輝羽』は、『サタン』を目の前にして
恐怖を感じるというよりは、逆に怒りが
込み上げてくるのであった。


 「お父さん。 私、許せない。

 
 あの『サタン』のこと。


 どうして『マニュエル』をこんなに苦しめ

るの?」


 「『輝羽』、気持ちはわかる。


 だがここで平静を失ったら終わりだ。


 常に冷静でいなければ、『サタン』に心を

飲み込まれる。


 とにかくここは『デスティニイ』に任せた

方がいい。」


 自分にも『マニュエル』のために何かでき
ないかと思っていた『輝羽』であったが、
その父のアドバイスには従うしかなかった。





「久しぶりだな。 『デスティニイ』。 


 ずい分、このオレを捜していたそうじゃ

ないか。」



 「お前がこの場に必ず姿を現すことは

わかっていた。


 それにしてもまさか天使の姿となって現れる

とはな。


 よほど天使に嫉妬(しっと)していると()えるが。




 五百年もの間、その姿をくらまし、

いまだに人間を邪悪(じゃあく)な道に引きずり込んでい

るお前のその悪行(あくぎょう)は、けっして許される

ものではない。


 もはやお前もこれまでだ。


 弁明(べんめい)の余地などない。


 《最高神》『ゴッド』様の(めい)により、

お前を極刑に処する。」             


 「《最高神》『ゴッド』の(めい)だと?


 笑わせるな。


 五百年もの間、お前はいったい何をしてき

たんだ。


 このオレを見つけられず、ただ手をこまねい

ていただけではないか。


 運命を司る《神》だ? 


 フンッ。


 《神》という名が聞いてあきれるわっ。


 人間を不幸に(おとし)めているのはいったい

どっちだ。


 お前の方だろっ。


 お前の怠慢(たいまん)で『マニュエル』は悲惨な運命

となった。


 あ~あ。 かわいそうにな。


 『マニュエル』。


 お前がオレにそうさせたんだ。


 お前がな。」


 「(だま)れっ、『サタン』。


 悪魔(あくま)に魂を売り、悪魔に成り下がった

(みにく)いお前に《神》を冒涜(ぼうとく)する資格はない。


 どのような存在であろうと人間の運命を

変えてしまう行為は、けっして許されることで

はない。



 それが例え《神》であろうとも。





 聖人君子(せいじんくんし)に値する人間『マニュエル』の

一生を、お前はその汚い手で台無しにした。


 許せん。


 絶対に許さん。


 自らが犯した恐ろしい罪を(つぐな)おうとも

せず、繰り返す悪行の数々。


 もはやお前に残された道は、《神》による

誅殺(ちゅうさつ)のみだっ。」

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

昇龍 導光《しょうりゅう どうこう》


代々続く祈祷師の家系に生まれた。昇龍家第四十八代当主。五十歳。

非常に高い霊能力を持つ。

ダンディで背が高く、スポーツマン。 

物腰柔らかで一見祈祷師には見えない。

導光が愛するものは何といっても龍と家族そしてスイーツ。

持って生まれた類まれなる霊能力と格の高い魂で、様々な視えざる存在と対峙しながら

迷える人々を幸福へ導くことを天命の職と自覚し、日々精進を重ねるまさに正統派の祈祷師。

昇龍 輝羽《しょうりゅう てるは》


導光の娘。ニ十歳。 

聖宝德学園大学 国際文化学部二年生。両親譲りの非常に高い霊能力の持ち主。

自分の霊能力をひけらかすこともなく、持って生まれたその力に感謝し、

将来は父のような祈祷師になりたいと思っている。

龍と月に縁がある。

龍を愛する気持ちは父の導光に劣らない。

穏やかな性格だが、我が道を行くタイプ。

自分の人生は自分で切り拓くがモットーで、誰の指図も受けないという頑固な面がある。 

浄魂鳥《じょうこんちょう》ケツァール   /   マニュエル


普通の人には見えない、いわゆる霊鳥。

五百年前、『マニュエル』という名の人間としてある国に生きた前世を持つ。

あまりにも壮絶な過去を背負ったがために転生できず、

ある想いを果たすため『浄魂鳥』としてこの世に存在し、

その時をずっと待ち続けてきた。

花畑 満《はなばたけ みちる》 / アレン


二十歳。『輝羽』と同じ大学で同じ学部の同級生。

日本人離れした端正な顔立ちの美男子。

五百年前、人間であった『浄魂鳥』と同じ村に住んでいた『アレン』という名の若者の前世を持つ。

十五年前に亡くなった叔母の遺言がすべてを明らかにするカギを握る。

野原 美咲《のばら みさき》/ 満の伯母 


十五歳。聖宝德学園大学付属中学三年バラ組。

十五年前に亡くなった『花畑 満』《はなばたけ みちる》の叔母の前世を持つ。

その時の記憶を持ったまま生まれてきた。

『満』《みちる》同様日本人離れした顔立ちの超美人。積極的な性格。

赤いバラの花の女神 マリア


とにかく美しいものが大好きな女神。

導光の元を訪れ、ある国にいる『浄魂鳥』を日本に連れて来てほしいと依頼する。

すべての出来事はこの依頼から始まった。

その『浄魂鳥』の想いを果たすことができれば、自分が見護っていたある人も

幸せになれるのだと導光に訴える。

白いバラの花の男神 ローマ


『赤いバラの花の女神 マリア』の許婚《いいなずけ》。

いつも『マリア』に振り回されている『マリア』一筋の男神。

ある事情で結婚を先延ばしにされてしまう。

天の神から頼まれ、導光の家に届け物をする。

それは『浄魂鳥』と深い関わりのあるものなのだが。。。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み