『ケツァール』の告白
文字数 673文字
にある
りである。
「さてと。。。
君のことを日本に連れて帰って来るので精
一杯だった。
ろくに君の話を聞いていなかったね。
『赤いバラの花の女神 マリア』から
君を日本に連れてくるように頼まれたんだ。
『赤いバラの花の女神 マリア』のことは
覚えているよね。」
導光がそう言うと、≪浄魂鳥≫のつぶらな
一つの目から止めどなく涙があふれてきた。
その涙を見た瞬間。
導光は、あまりにも冷たく、今にも凍りそ
うな川の水が、自分の胸の中に一気に押し寄
せて来るように感じた。
(何ということだ。
この鳥の心は、深い悲しみと孤独で完全に
凍りついてしまっている。
何としても、その心を暖かい光で照らし、
救ってあげなければ。。。)
この時、導光はそう決意したのである。
「君は確か、もう自分の名前も覚えていない
んだよね?
じゃあ、君のことを『ケツァール』と呼ん
でいいかい?
『赤いバラの花の女神 マリア』も君のこと
をそう呼んでいたし。
詳しい話を聞かせてくれるかい?
『ケツァール』。」
「導光さま。
この
遠くまで迎えに来てくださり、ありがとうご
ざいました。
もうかなり昔のこと。
私は自分の名前すら
憶えているのは、人間であったときの断片的
な記憶と私の命を助けてくれた友の名前。
その友の名は『アレン』。
そしてずっと私のそばにいてくれた
山ネコの『ビリー』だけです。」
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