【幸福の青き鳥の力】

文字数 1,156文字

 「さあ。。。ついに『マニュエル』が、

受け取るという意志を示しました。


 まずは三羽の鳥たち。


 『マニュエル』のために創り上げた力を

『マニュエル』に贈りましょう。」


 三羽の鳥たちは、『ゴッド』の呼びかけに
「はい。」と答えるようにうなずいた。





 「罪深き鳥たちよ。


 お前たちは、ひとりの(とうと)き魂の持ち主、


『マニュエル』を犠牲にした。


 結ばれていた強き絆を絶ち切り、

不幸へと(おとし)めた。


 その罪は、例え『マニュエル』が許そう

とも、この《神》が許さぬ。





 だが、自らの幸福が『マニュエル』の犠牲

の上に成り立っていたことに深く悩み、

苦しみ続け、五百年もの間、懺悔(ざんげ)の日々を

過ごし、大切な家族であった『マニュエル』

に対して芽生(めば)えた贖罪(しょくざい)の気持ちは(まこと)なるもの

であること、よくわかった。


 再会を果たし、深く謝罪した今。。。





 時は来た。





 不幸にしてしまったお前たちの家族、

『マニュエル』のため、今こそ創り上げた

幸福(しあわせ)の青き鳥の力】を手渡すがよい。」




 そう(とな)えると、『ゴッド』は、三羽の鳥
たちを宙へと舞い上がらせた。


 羽のない父鳥、口ばしのない母鳥、そして
片足のない兄鳥は、『満』の右肩に止まって
いる『マニュエル』の頭上でゆっくりと回り
始めた。


 輪になって回る三羽の鳥たち。


 今まで何色とも見分けがつかなかった、
ぼやけた色合いだった三羽の鳥たち。


 『マニュエル』の頭上で、優しく輪に
なって回り続けている。


 時々、少し上へ舞い上がったかと思うと
今度はそのまま下へ舞い降りたり。


 じっと見つめていると、その様子は、
まるで可愛らしい小鳥たちの
《メリーゴーランド》。


 次第に三羽の鳥たちは、薄い水色から
徐々にその色合いを濃くしていき、ついに
見るも鮮やかな青き鳥へと変貌(へんぼう)()げて
いったのである。


 羽のなかった父鳥の羽は(よみがえ)り、美しく
羽ばたいている。


 口ばしのなかった母鳥は、黄色い口ばしで
生き生きとさえずっている。


 そして、片足のなかった兄鳥は、『満』の
右肩に止まっていた。


 しっかりとその両足で立ち、隣りにいる
『マニュエル』を、その両羽で優しく包み
込んでいた。


 親鳥たちも二羽の子供鳥たちに寄り添う
ように集まってきた。




 「今だ。


 青き色を取り戻した三羽の鳥たちよ。


 『マニュエル』に力を与えるがよい。」




 『ゴッド』がそう合図すると、今まで
『ゴッド』の出現で柔らかな光に包まれて
いた導光の部屋は、輝くような青い光で
満たされ、まるでそこにいる全員が、深い、
深い海の中にいるようだった。


 「言葉がない。。。


 なんと美しい光景なんだ。。。」


 導光は、そのあまりの美しさに完全に魅了
されていた。


 そして、『マニュエル』に(きら)めく蒼穹(そうきゅう)
ような光のスポットライトが当たった瞬間。


 『マニュエル』には、確かに三羽の鳥たち
が創り上げた【幸福(しあわせ)の青き鳥の力】が宿され
たのであった。

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登場人物紹介

昇龍 導光《しょうりゅう どうこう》


代々続く祈祷師の家系に生まれた。昇龍家第四十八代当主。五十歳。

非常に高い霊能力を持つ。

ダンディで背が高く、スポーツマン。 

物腰柔らかで一見祈祷師には見えない。

導光が愛するものは何といっても龍と家族そしてスイーツ。

持って生まれた類まれなる霊能力と格の高い魂で、様々な視えざる存在と対峙しながら

迷える人々を幸福へ導くことを天命の職と自覚し、日々精進を重ねるまさに正統派の祈祷師。

昇龍 輝羽《しょうりゅう てるは》


導光の娘。ニ十歳。 

聖宝德学園大学 国際文化学部二年生。両親譲りの非常に高い霊能力の持ち主。

自分の霊能力をひけらかすこともなく、持って生まれたその力に感謝し、

将来は父のような祈祷師になりたいと思っている。

龍と月に縁がある。

龍を愛する気持ちは父の導光に劣らない。

穏やかな性格だが、我が道を行くタイプ。

自分の人生は自分で切り拓くがモットーで、誰の指図も受けないという頑固な面がある。 

浄魂鳥《じょうこんちょう》ケツァール   /   マニュエル


普通の人には見えない、いわゆる霊鳥。

五百年前、『マニュエル』という名の人間としてある国に生きた前世を持つ。

あまりにも壮絶な過去を背負ったがために転生できず、

ある想いを果たすため『浄魂鳥』としてこの世に存在し、

その時をずっと待ち続けてきた。

花畑 満《はなばたけ みちる》 / アレン


二十歳。『輝羽』と同じ大学で同じ学部の同級生。

日本人離れした端正な顔立ちの美男子。

五百年前、人間であった『浄魂鳥』と同じ村に住んでいた『アレン』という名の若者の前世を持つ。

十五年前に亡くなった叔母の遺言がすべてを明らかにするカギを握る。

野原 美咲《のばら みさき》/ 満の伯母 


十五歳。聖宝德学園大学付属中学三年バラ組。

十五年前に亡くなった『花畑 満』《はなばたけ みちる》の叔母の前世を持つ。

その時の記憶を持ったまま生まれてきた。

『満』《みちる》同様日本人離れした顔立ちの超美人。積極的な性格。

赤いバラの花の女神 マリア


とにかく美しいものが大好きな女神。

導光の元を訪れ、ある国にいる『浄魂鳥』を日本に連れて来てほしいと依頼する。

すべての出来事はこの依頼から始まった。

その『浄魂鳥』の想いを果たすことができれば、自分が見護っていたある人も

幸せになれるのだと導光に訴える。

白いバラの花の男神 ローマ


『赤いバラの花の女神 マリア』の許婚《いいなずけ》。

いつも『マリア』に振り回されている『マリア』一筋の男神。

ある事情で結婚を先延ばしにされてしまう。

天の神から頼まれ、導光の家に届け物をする。

それは『浄魂鳥』と深い関わりのあるものなのだが。。。

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