『マニュエル』の覚悟
文字数 714文字
知らせてくれて。
私はもう捕まってもいい、
そう思っている。
むしろ捕まることなど怖くない。
なんとも思ってないよ。」
「どうして?
捕まったら殺されてしまうだろ。
そんなこと、僕は絶対にさせはしない。」
「例え捕まっても、私は何も語るつもりは
ない。
どんなに
が、絶対に何も話さない。
その時は
そんなときのために苦しまずに一気に
死ねる方法もちゃんと教えられた。
私は、私のような犠牲者はもう出したくは
ないんだ。
敵国には私のような犠牲者が数え切れない
ほどたくさんいる。
こうしているうちにもスパイとして養成
された仲間たちが、国の命令の下、あらゆる
国へと派遣され、毎日死と隣り合わせの人生
を送っている。
私が売られた国もこの国と同じ。
何のためらいもなく簡単に国民を売ったり
買ったり。
国民を戦いのための道具としか思っていな
いんだ。
どの国もみな狂っている。
他国の領土を奪い、
他国の国民の命を奪い、
他国の文化を踏みにじり、破壊する。
そんなことにいったい何の価値があると
いうんだ。
力づくで
国を
終わらない。
その愚かさに気づく時、すべては消滅してい
るだろう。
捕まったら私は一言こう言ってから死ぬ。
「「国民が敵に売られても平気でいる。
放ったまま救おうともしない。
お前たちはそれでも人間か。
お前たちこそ悪魔だっ。」」
『アレン』には、その『マニュエル』の
言葉が胸にぐさりと突き刺さった。
まるでその突き刺さった剣で胸をえぐり
取られる思いがした。
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