『満』の想い

文字数 914文字

 「満君。本当によかったね。」


 「えっ、あっ、うん。」


 「叔母さんのこと、いつまでも忘れないで

あげてね。」


 「忘れたことはないよ。


 小さい頃だったから、あんまり覚えてない

けど。。。


 僕は、叔母さんのことがとっても好き

だったらしいよ。


 今でも好きだよ。」


 「いつか、『ニーナ』とまた逢えると

いいね。」


 「うん。でも何か実感がなくて。。。


 自分の結ばれる相手がもう決まってるって

どうなのかな?」


 「えっ、それって、とっても贅沢(ぜいたく)

疑問よ。」


 「そうかな?」


 「そうよ。


 だって、それって、それこそ≪運命の人≫

ってことでしょ?」


 「≪運命の人≫か。。。」


 「この世の中、本当に縁のある人と結ばれ

ている人って少ないそうよ。」



 しばらく二人のやり取りを聞いていた
導光は、

 「『輝羽』。


 必ずしも縁があるからいい。。。


 そういうものでもないんだよ。」


 「どうして?」


 「縁というものは、自ら創るものでもある

んだ。


  縁のある人を探すことばかりに(こだわ)るので

はなく、新たに縁を(つむ)ぐことも大切なことな

んだ。」   


 「ふ~ん。」


 「『満』君のその疑問は、自分の結婚相手

は自分で決める。


 ≪運命の人≫だからといってその人を選ぶ

とは限らないってことだろ?」


 「そっ、そうです。


 まさしくそのとおりです。


 縁がどうとか、運命がどうとかではなく、

自分で決めたいんです。」


 「そうかな? 


 私は、出逢えた方がいいけどな。。。


 ≪運命の人≫。。。



  お父さん。


 私の≪運命の人≫ってどんな人?」


 「そっ、それは。。。


 いくら私でもわからないよ。」


 「どうして?


 だって、お父さんはお母さんと出逢った

時、この人と絶対に結婚するって思ったんで

しょ。


 それって≪運命の人≫ってことじゃない。」


 「お父さんの話はいいよ。


 『輝羽』もいつか出逢えるんじゃないか。


 きっと。。。」





 『輝羽』は、ちょっとご機嫌斜(きげんなな)めだった。


 そんなちょっとムカついている娘を横目で
見ながら、導光は、いつか自分の手元から
離れていくであろう娘のことを考えると、心
淋しくなるのであった。





 「今日は、ありがとうございました。


 とってもいい経験をさせてもらいました。


 じゃあ、僕はこれで失礼します。」

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登場人物紹介

昇龍 導光《しょうりゅう どうこう》


代々続く祈祷師の家系に生まれた。昇龍家第四十八代当主。五十歳。

非常に高い霊能力を持つ。

ダンディで背が高く、スポーツマン。 

物腰柔らかで一見祈祷師には見えない。

導光が愛するものは何といっても龍と家族そしてスイーツ。

持って生まれた類まれなる霊能力と格の高い魂で、様々な視えざる存在と対峙しながら

迷える人々を幸福へ導くことを天命の職と自覚し、日々精進を重ねるまさに正統派の祈祷師。

昇龍 輝羽《しょうりゅう てるは》


導光の娘。ニ十歳。 

聖宝德学園大学 国際文化学部二年生。両親譲りの非常に高い霊能力の持ち主。

自分の霊能力をひけらかすこともなく、持って生まれたその力に感謝し、

将来は父のような祈祷師になりたいと思っている。

龍と月に縁がある。

龍を愛する気持ちは父の導光に劣らない。

穏やかな性格だが、我が道を行くタイプ。

自分の人生は自分で切り拓くがモットーで、誰の指図も受けないという頑固な面がある。 

浄魂鳥《じょうこんちょう》ケツァール   /   マニュエル


普通の人には見えない、いわゆる霊鳥。

五百年前、『マニュエル』という名の人間としてある国に生きた前世を持つ。

あまりにも壮絶な過去を背負ったがために転生できず、

ある想いを果たすため『浄魂鳥』としてこの世に存在し、

その時をずっと待ち続けてきた。

花畑 満《はなばたけ みちる》 / アレン


二十歳。『輝羽』と同じ大学で同じ学部の同級生。

日本人離れした端正な顔立ちの美男子。

五百年前、人間であった『浄魂鳥』と同じ村に住んでいた『アレン』という名の若者の前世を持つ。

十五年前に亡くなった叔母の遺言がすべてを明らかにするカギを握る。

野原 美咲《のばら みさき》/ 満の伯母 


十五歳。聖宝德学園大学付属中学三年バラ組。

十五年前に亡くなった『花畑 満』《はなばたけ みちる》の叔母の前世を持つ。

その時の記憶を持ったまま生まれてきた。

『満』《みちる》同様日本人離れした顔立ちの超美人。積極的な性格。

赤いバラの花の女神 マリア


とにかく美しいものが大好きな女神。

導光の元を訪れ、ある国にいる『浄魂鳥』を日本に連れて来てほしいと依頼する。

すべての出来事はこの依頼から始まった。

その『浄魂鳥』の想いを果たすことができれば、自分が見護っていたある人も

幸せになれるのだと導光に訴える。

白いバラの花の男神 ローマ


『赤いバラの花の女神 マリア』の許婚《いいなずけ》。

いつも『マリア』に振り回されている『マリア』一筋の男神。

ある事情で結婚を先延ばしにされてしまう。

天の神から頼まれ、導光の家に届け物をする。

それは『浄魂鳥』と深い関わりのあるものなのだが。。。

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