裏切られた怒り、そして無念
文字数 831文字
『デスティニイ』の涙の訴えも、
『マニュエル』の心に届くことはなかった。
嘆きの涙で顔がくしゃくしゃの
『マニュエル』。
その表情は、あまりにも痛々しく、誰も
『マニュエル』に目を向けていられないほど
であった。
心から信じていた唯一の家族の裏切り。
家族だけが救いだったあの頃。
『マニュエル』の心には、
が
「私が、もし父親なら。。。
私なら、例えどんなに貧しかろうと絶対に
自分の子どもをこの手から離しはしません。
ましてや敵に売るなどと。
そんなことをしたら、その子どもがどんな
も想像できるはずでしょう。
たとえ自分が貧しかろうと、子どもも
自分と同じ人生を歩むとは限らない。
子どもは子ども。
子どもには、子どもの人生があったはず。
でも父親は、自分の人生そのものが、
子どもの人生だと勝手に思い込んだ。
子どもというものは、親の背中を見て
育つもの。
貧しい中でも精一杯育てれば、親に感謝
こそすれ、
私が神父であった頃、人間であった
『サタン』を救ったのは、おそらく信じて
いた母親に救いの手を差し伸べられずに
振り払われた『サタン』を哀れに思えたから
でしょう。
家族とは一番絆の深き存在のはず。
その家族から見捨てられた『サタン』の
気持ちに私は同情したのだと思います。
もし私がその立場だったら、どんなに
思いをしただろう。
家族なのに。。。
そして、今度は。。。
この私が、自分の家族にその『サタン』と
同じ目に
そういうことでしょう。」
その『マニュエル』の魂の叫びは、人の命
の
自分さえ楽になれば家族など。。。
子どもなど犠牲にしても構わない。。。
あえて故意に敵の国に売るというその父親の
行為そのものを、『マニュエル』は絶対に
許すことができなかったのである。
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