紐解かれた宝石箱の謎

文字数 854文字

 すると『ローマ』が、

 「それにしてもこの男の子。。。


 あっ、やっと思い出した。


 あの時の。。。


 実は、私が《神》より依頼を受け、

≪ブルガリア≫という国まで道案内をした

女性にそっくりなんですよね。」


 チラチラと『満』の顔を横目で見ながら

そう言った。


 「道案内?」

 導光がそう言うと、


 「ええ。」


 その時、『ローマ』は『満』の近くにある

テーブルの上にあった宝石箱を見つけ、


 「あっ、それっ。


 その宝石箱。


 私は、その女性がその宝石箱を受け取るた

めに、≪ブルガリア≫の木工職人の家まで

その女性を案内したのです。


 『マニュエル』という名の人間が亡くなっ

たあと、この宝石箱は、彼の胸の上に大切に

(かか)えられていました。


《神》は、その宝石箱を、ある木工職人の

元に運ぶよう私に指示されたのです。


 私は単なる運び手。


 言わばトランスポーター。


 のちに《神》からのメッセージが、

その木工職人の元に届けられたそうです。


 (くわ)しい話はわかりませんが、

かつてその女性は、現在の≪ブルガリア≫に

生まれ、事情があって受け取るはずだった

その宝石箱を受け取ることができずに亡くな

ってしまったと聞いています。


 道中(どうちゅう)、その女性は、私に、かつての名前は

『ニーナ』だと教えてくれました。」


 『ローマ』は、過去の記憶を辿(たど)りながら、
『満』の伯母の道案内をした時のことを思い
出しながら、そう説明したのである。


 「そうだったのか。


 いったいどうやって『満』君の伯母さんが、

宝石箱の持ち主の元までたどり着けたのか、

やっと謎が解けたぞ。」


 次第に明らかになっていく過去の真実。


 その真実を紐解(ひもと)きながらも、導光の心の中

には、『マニュエル』と出会ってからずっと

抱いていた一つの大きな疑問が渦巻いていた

のである。


 (おかしい。 どう考えても変だ。


 こんなに素晴らしい魂を持っている

『マニュエル』が、どうしてこんな悲惨な

人生を歩まなければならなかったんだ。


 私にはどうしてもわからない。


 。。。。。。。。


 きっと何かある。

 誰も知らない隠された理由(わけ)が、きっとある

はずだ。)
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登場人物紹介

昇龍 導光《しょうりゅう どうこう》


代々続く祈祷師の家系に生まれた。昇龍家第四十八代当主。五十歳。

非常に高い霊能力を持つ。

ダンディで背が高く、スポーツマン。 

物腰柔らかで一見祈祷師には見えない。

導光が愛するものは何といっても龍と家族そしてスイーツ。

持って生まれた類まれなる霊能力と格の高い魂で、様々な視えざる存在と対峙しながら

迷える人々を幸福へ導くことを天命の職と自覚し、日々精進を重ねるまさに正統派の祈祷師。

昇龍 輝羽《しょうりゅう てるは》


導光の娘。ニ十歳。 

聖宝德学園大学 国際文化学部二年生。両親譲りの非常に高い霊能力の持ち主。

自分の霊能力をひけらかすこともなく、持って生まれたその力に感謝し、

将来は父のような祈祷師になりたいと思っている。

龍と月に縁がある。

龍を愛する気持ちは父の導光に劣らない。

穏やかな性格だが、我が道を行くタイプ。

自分の人生は自分で切り拓くがモットーで、誰の指図も受けないという頑固な面がある。 

浄魂鳥《じょうこんちょう》ケツァール   /   マニュエル


普通の人には見えない、いわゆる霊鳥。

五百年前、『マニュエル』という名の人間としてある国に生きた前世を持つ。

あまりにも壮絶な過去を背負ったがために転生できず、

ある想いを果たすため『浄魂鳥』としてこの世に存在し、

その時をずっと待ち続けてきた。

花畑 満《はなばたけ みちる》 / アレン


二十歳。『輝羽』と同じ大学で同じ学部の同級生。

日本人離れした端正な顔立ちの美男子。

五百年前、人間であった『浄魂鳥』と同じ村に住んでいた『アレン』という名の若者の前世を持つ。

十五年前に亡くなった叔母の遺言がすべてを明らかにするカギを握る。

野原 美咲《のばら みさき》/ 満の伯母 


十五歳。聖宝德学園大学付属中学三年バラ組。

十五年前に亡くなった『花畑 満』《はなばたけ みちる》の叔母の前世を持つ。

その時の記憶を持ったまま生まれてきた。

『満』《みちる》同様日本人離れした顔立ちの超美人。積極的な性格。

赤いバラの花の女神 マリア


とにかく美しいものが大好きな女神。

導光の元を訪れ、ある国にいる『浄魂鳥』を日本に連れて来てほしいと依頼する。

すべての出来事はこの依頼から始まった。

その『浄魂鳥』の想いを果たすことができれば、自分が見護っていたある人も

幸せになれるのだと導光に訴える。

白いバラの花の男神 ローマ


『赤いバラの花の女神 マリア』の許婚《いいなずけ》。

いつも『マリア』に振り回されている『マリア』一筋の男神。

ある事情で結婚を先延ばしにされてしまう。

天の神から頼まれ、導光の家に届け物をする。

それは『浄魂鳥』と深い関わりのあるものなのだが。。。

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