救えた命
文字数 1,438文字
止血草を傷口に当てるため、布の包帯を
ほどいていた時、山ネコが目を覚ました。
まだ傷はとても痛そうだった。
止血草の効果もあり、出血は収まり、
傷は
始めていた。
「気がついたかい?
君は三日間ずっと意識がなかったんだよ。
良かった。
目を開けてくれて。
もうこのまま目を
ないかと思ったよ。
もしそんなことになったら。。。
私は、また危うく犠牲者を増やしてしまう
ところだった。」
そう問いかける『マニュエル』を、山ネコ
はじっと見つめていた。
「君は山ネコだろ?
どうして人間を襲わないんだ?
人間が怖くはないのかい?」
きょとんとした表情で『マニュエル』を
見ている山ネコ。
「人間の言葉はわからないか。
そうだよな。
とにかく、早く良くなって、山に帰ると
いい。
助けてくれてありがとう。
どうして私のような人間を助けてくれるのか
わからないけど。。。」
山ネコが一体何を食べているのかさっぱり
わからない『マニュエル』は、とりあえず山で
山ネコは、傷ついた右の前足をかばうよう
に上半身を起こし、左の前足で体を支えなが
ら『マニュエル』が与えたスープの
ぎ始めた。
そして、舌を出してスープの味見をした。
その味を確かめているのか、しばらく
じっとスープを見つめ、ペロペロと舌を
うまく使って少しずつスープを飲み始めた。
時々、『マニュエル』の顔をチラッと見て
はキノコを見つめ、また『マニュエル』の顔
を見る。
まるでこんなものを食べさせるのかと文句
を言っているように見える。
スープはペロッと平らげたが、キノコは食
べず、残されてしまった。
「わかったよ。
キノコはお気に召さなかったようだね。
私は君が何を食べるのか分からないんだ。
仕方ないだろう。」
そう言って山ネコの頭を
山ネコは、目を細めながら『マニュエル』
が
「いったい私は何をしているんだ。
大切な友人を死に追いやり、死のうと思っ
てここまで来たのに。
今度は君がこんな私を救ってくれた。
私を救うために、
どうしてそこまでして私を。。。」
『マニュエル』は、山ネコにそう問いかけ
てみた。
今まで恐ろしいと思っていた山ネコだった
が、よく見てみると、とても愛らしい瞳をし
ている。
青い瞳だ。
だが、その瞳には、狙った獲物は絶対に
さないという野生の山ネコ特有の
さを感じる。
馬のようにすらりとした四本の足。
立ち耳の犬のように長くピンと立っている
両耳。
村にいた野良猫とは比べ物にならないほど
の威厳ある姿。
「わかるわけがない。。。か。
人間の言葉は君にはわからないよな。」
でもひとつだけ確かなことがあった。
それは、この山ネコが『マニュエル』を
救ってくれたということ。
「《神》など信じたことのない私。
私は、《神》に見放されているのかと思っ
ていた。
だからこんな苦しい人生なんだと。
ずっとそう思っていた。
でも、今何かを感じる。
もしかしたら、私はまだ見捨てられてはい
ないのではないかと。」
『マニュエル』には、なぜか山ネコの想い
が通じているようだった。
「もしかしたら。。。
君は、《神》なのかもしれないね。」
こうして『マニュエル』は、山ネコと共に
再び生き始めた。
そして、その山ネコに『ビリー』という
名前をつけた。
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