叔母との不思議な縁

文字数 887文字

 導光は不思議に思い、『満』に詳しい説明
を求めた。


 「はい。


 僕が二十歳(はたち)になるまで絶対に封を開けない

でって言われてたそうです。」


 「言われてたって、誰に?」


 「叔母です。父の妹です。」


 「何か、その遺言が今回のことに関係があ

る気がして。


 今日持って来ました。」


 『満』によれば、薔薇の花が大好きだった
『満』の伯母は、『満』がまだ五歳の時に
三十五歳の若さで他界したそうだ。


 叔母は、『満』が生まれた時、ことのほか
喜んでくれて、生まれたばかりの『満』を
抱きながら、なぜか『満』に向かって

 「『アレン』。『アレン』。」


 そう声をかけていたというのだ。


 『満』の父は、妹である『満』の伯母の
その言葉をよく覚えていて、どうして
『アレン』と声を掛けるのかと尋ねた
ところ、


 自分の知り合いにそっくりだからと言った
そうだ。


 「あっ、それから遺言の他にもう一つ。


 これも父から渡されました。」


 そう言って、バッグから取り出したのは、
ハート形の宝石箱。


 それは、『満』の伯母がとても大切にして
いた宝石箱だという。


 その宝石箱を視た途端(とたん)、『マニュエル』の
表情が変わり、今度はその宝石箱の周りを
ぐるぐると飛び回った。


 「導光さま。


 これは。。。この宝石箱は。。。


 私が作った宝石箱です。


 間違いありません。


 最後まで渡せずにいた宝石箱。


 死ぬ間際までしっかり持っていた記憶は

ありますが、その(あと)行方(ゆくえ)は私にはわかりま

せんでした。」


 「わかったよ。『マニュエル』。」


 導光にそう話す『マニュエル』は、本当に
嬉しそうだった。


 「『満』君。 君の言うとおり。


 きっと今回のことに、何か関係があるよう

だね。


 その叔母さんの遺言だが、読ませてもらっ

てもいいかい?」


 「はい。どうぞ。」


 『満』はそう言うと、封筒の上部を手で
切り、中に入っている手紙を導光に渡した。


(遺言状なんて、ほとんど目にすること

はない。


 ましてや第三者の遺言など。。。


 いったいどんなことが書かれてあるのだろ

うか。。。)


 その遺言状を持つ導光の手は、かすかに
震えていた。


 そして導光は、緊張しながら『満』の伯母
の遺言状を読み始めたのである。

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登場人物紹介

昇龍 導光《しょうりゅう どうこう》


代々続く祈祷師の家系に生まれた。昇龍家第四十八代当主。五十歳。

非常に高い霊能力を持つ。

ダンディで背が高く、スポーツマン。 

物腰柔らかで一見祈祷師には見えない。

導光が愛するものは何といっても龍と家族そしてスイーツ。

持って生まれた類まれなる霊能力と格の高い魂で、様々な視えざる存在と対峙しながら

迷える人々を幸福へ導くことを天命の職と自覚し、日々精進を重ねるまさに正統派の祈祷師。

昇龍 輝羽《しょうりゅう てるは》


導光の娘。ニ十歳。 

聖宝德学園大学 国際文化学部二年生。両親譲りの非常に高い霊能力の持ち主。

自分の霊能力をひけらかすこともなく、持って生まれたその力に感謝し、

将来は父のような祈祷師になりたいと思っている。

龍と月に縁がある。

龍を愛する気持ちは父の導光に劣らない。

穏やかな性格だが、我が道を行くタイプ。

自分の人生は自分で切り拓くがモットーで、誰の指図も受けないという頑固な面がある。 

浄魂鳥《じょうこんちょう》ケツァール   /   マニュエル


普通の人には見えない、いわゆる霊鳥。

五百年前、『マニュエル』という名の人間としてある国に生きた前世を持つ。

あまりにも壮絶な過去を背負ったがために転生できず、

ある想いを果たすため『浄魂鳥』としてこの世に存在し、

その時をずっと待ち続けてきた。

花畑 満《はなばたけ みちる》 / アレン


二十歳。『輝羽』と同じ大学で同じ学部の同級生。

日本人離れした端正な顔立ちの美男子。

五百年前、人間であった『浄魂鳥』と同じ村に住んでいた『アレン』という名の若者の前世を持つ。

十五年前に亡くなった叔母の遺言がすべてを明らかにするカギを握る。

野原 美咲《のばら みさき》/ 満の伯母 


十五歳。聖宝德学園大学付属中学三年バラ組。

十五年前に亡くなった『花畑 満』《はなばたけ みちる》の叔母の前世を持つ。

その時の記憶を持ったまま生まれてきた。

『満』《みちる》同様日本人離れした顔立ちの超美人。積極的な性格。

赤いバラの花の女神 マリア


とにかく美しいものが大好きな女神。

導光の元を訪れ、ある国にいる『浄魂鳥』を日本に連れて来てほしいと依頼する。

すべての出来事はこの依頼から始まった。

その『浄魂鳥』の想いを果たすことができれば、自分が見護っていたある人も

幸せになれるのだと導光に訴える。

白いバラの花の男神 ローマ


『赤いバラの花の女神 マリア』の許婚《いいなずけ》。

いつも『マリア』に振り回されている『マリア』一筋の男神。

ある事情で結婚を先延ばしにされてしまう。

天の神から頼まれ、導光の家に届け物をする。

それは『浄魂鳥』と深い関わりのあるものなのだが。。。

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