『サタン』、その真の姿

文字数 812文字

 それは。。。


 ≪ツマジロエダシャク≫という名の[()]。


 今にも天使が飛び立ちそうな優美な姿。


 ところが。。。


 それは、あくまでも仮の姿なのである。


 この[()]の奥に隠れた(しん)(みにく)い正体こそ、
『デスティニイ』が五百年もの間、追い続け
てきた、あの憎き『サタン』なのである。


 『サタン』は、天使にも似たこの[()]に姿を
変え、多くの≪モルフォ蝶≫の大群を従え、
ここまでやって来たのであった。


 一見、天使のようにも見える
≪ツマジロエダシャク≫。


 羽根を広げると、まるで天使がその翼を
大きく広げ、羽ばたいているかのような
優雅なシルエットで人々を魅了する。


 それが、[()]であるとはとても思えないほど
あまりにも高貴な姿。


 だがその本性は、嫉妬(しっと)傲慢(ごうまん)でどす黒く汚
れ、《神》に反逆し、罰せられ、ついには
天界から追放された堕天使(だてんし)


 さらに。。。


 その堕天使(だてんし)は、自らを()い改めることなく
さらに()ち、とうとう『サタン』に成り下が
ってしまった。


 ≪ツマジロエダシャク≫に()けた
『サタン』は、空に舞い上がると、羽ばたき
ながらゆっくり回転した。


 そして、

 大声で高笑いをしながらその真の姿を見せ
始めたのである。




 「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ。。。」





 足元から徐々に現れる不気味な肉体。


 二本の黒い足は、まるで[(けもの)]そのもの。


 今にも人を襲いかねない鋭い三本の爪が、
その足に生えている。


 
 風に揺れる(たび)に真っ黒なマントから視え
隠れするその体は、どす黒い毛で(おお)われ、
両手は[蛇]のように長く、一体どこまでが
腕で、どこまでが手指なのかわからない。


 顔はあまりにも恐ろしく、まさに[鬼]
そのもの。


 釣り上がり、今にも飛び出しそうな
ギョロっとした目でにらみつけられると
ゾッとして、悪寒が全身を走り抜ける。


 鼻はねじ曲がり、横に裂けた口は
(きば)をむいている。
 

 頭には二本の鋭い(つの)があった。


 そう。


 [般若(はんにゃ)]の面を思い浮かべてもらえば
どのような顔か想像がつくであろう。

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登場人物紹介

昇龍 導光《しょうりゅう どうこう》


代々続く祈祷師の家系に生まれた。昇龍家第四十八代当主。五十歳。

非常に高い霊能力を持つ。

ダンディで背が高く、スポーツマン。 

物腰柔らかで一見祈祷師には見えない。

導光が愛するものは何といっても龍と家族そしてスイーツ。

持って生まれた類まれなる霊能力と格の高い魂で、様々な視えざる存在と対峙しながら

迷える人々を幸福へ導くことを天命の職と自覚し、日々精進を重ねるまさに正統派の祈祷師。

昇龍 輝羽《しょうりゅう てるは》


導光の娘。ニ十歳。 

聖宝德学園大学 国際文化学部二年生。両親譲りの非常に高い霊能力の持ち主。

自分の霊能力をひけらかすこともなく、持って生まれたその力に感謝し、

将来は父のような祈祷師になりたいと思っている。

龍と月に縁がある。

龍を愛する気持ちは父の導光に劣らない。

穏やかな性格だが、我が道を行くタイプ。

自分の人生は自分で切り拓くがモットーで、誰の指図も受けないという頑固な面がある。 

浄魂鳥《じょうこんちょう》ケツァール   /   マニュエル


普通の人には見えない、いわゆる霊鳥。

五百年前、『マニュエル』という名の人間としてある国に生きた前世を持つ。

あまりにも壮絶な過去を背負ったがために転生できず、

ある想いを果たすため『浄魂鳥』としてこの世に存在し、

その時をずっと待ち続けてきた。

花畑 満《はなばたけ みちる》 / アレン


二十歳。『輝羽』と同じ大学で同じ学部の同級生。

日本人離れした端正な顔立ちの美男子。

五百年前、人間であった『浄魂鳥』と同じ村に住んでいた『アレン』という名の若者の前世を持つ。

十五年前に亡くなった叔母の遺言がすべてを明らかにするカギを握る。

野原 美咲《のばら みさき》/ 満の伯母 


十五歳。聖宝德学園大学付属中学三年バラ組。

十五年前に亡くなった『花畑 満』《はなばたけ みちる》の叔母の前世を持つ。

その時の記憶を持ったまま生まれてきた。

『満』《みちる》同様日本人離れした顔立ちの超美人。積極的な性格。

赤いバラの花の女神 マリア


とにかく美しいものが大好きな女神。

導光の元を訪れ、ある国にいる『浄魂鳥』を日本に連れて来てほしいと依頼する。

すべての出来事はこの依頼から始まった。

その『浄魂鳥』の想いを果たすことができれば、自分が見護っていたある人も

幸せになれるのだと導光に訴える。

白いバラの花の男神 ローマ


『赤いバラの花の女神 マリア』の許婚《いいなずけ》。

いつも『マリア』に振り回されている『マリア』一筋の男神。

ある事情で結婚を先延ばしにされてしまう。

天の神から頼まれ、導光の家に届け物をする。

それは『浄魂鳥』と深い関わりのあるものなのだが。。。

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