死への恐怖
文字数 299文字
向こう側の壁に向かって
壁には棚が取り付けてあり、その棚の一番
上に、『アレン』に渡すことのできなかった
宝石箱が置いてある。
『マニュエル』は、あの時から毎日この
宝石箱を見つめていた。
壁に張り付くように、なんとか手を使って
立ち上がり、一番上の棚の方へ手を伸ばして
宝石箱をつかんだ。
その拍子に支えていた手が壁から離れてしま
い、『マニュエル』は宝石箱をつかんだまま
床にあお向けに倒れてしまった。
もう、ほとんど意識がない。
次第に遠のいていく意識の中で、
『マニュエル』は、ひたすら『ビリー』の名
を呼び続けた。
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