『アレン』の助言
文字数 593文字
『アレン』は、作業を中断して急ぎ山へ
向かった。
町の兵士が、『マニュエル』を探している
ことを一刻も早く『マニュエル』に伝えなけ
ればならないと思ったのだ。
周囲に注意を払いながら誰にも後をつけら
れないよう、時々後ろを振り返りながら山小
屋に向かった。
そして、山小屋の裏手に回り、窓越しに
部屋を見た。
そこには、懸命に木工作業に打ち込んでい
る『マニュエル』の姿があった。
『アレン』は、しばらくじっと
『マニュエル』を見つめていた。
すると、その視線に気づいたのか、
『マニュエル』は窓の向こうで自分を見てい
る『アレン』に手を振った。
そしてドアの方を指差し、「入って!」と
目で合図した。
「やあ、『アレン』。
宝石箱作りに夢中になって、しばらく顔を
出せなかった。
見てくれよ。
だいぶ宝石箱らしくなってきただろ?。」
そんな得意げな『マニュエル』に
『アレン』は、
「それどころじゃないんだ。
『マニュエル』、たいへんだ。
村中で
隣町の兵士が、半年前に起きた資産家一家
殺人事件の犯人をずっと捜し続けているらし
いって。
村人の
るそうだ。
この村にも当然やって来ているはずだ。
危ないからもう僕の所には来ないでくれ。
しばらくこの山小屋で、じっとしていた方
がいい。」
そう言う『アレン』を『マニュエル』は、
ずっと無言で見つめていた。
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