いざ、出発

文字数 529文字

 真夜中はあまりにも暗い。


 明け方、『マニュエル』は、少し辺りが明
るくなるのを待った。


 そして、贈り物と手紙の入った布袋(ぬのぶくろ)を背負
い、村へ向かった。


 『アレン』の家までは、山の(ふもと)から十五分
ほどの道のり。


 山を下り、森を抜け、何とか(ふもと)にたどり着
いた。


 雨上がりのせいか、辺りには霧が立ち込め
ている。


 霧で視界が(さえぎ)られる中、誰もいないことを
確認すると『マニュエル』は足早に歩いた。


 明るくなってきたとはいえ、足元はまだ
暗く、村に続く道は、霧のせいでよく見えな
かった。


 (この霧なら

兵士に見つかりにくいはずだ。


 私にとっては逆に好都合。


 もうすぐ『アレン』の家にたどり着ける。


 もうすぐだ。)


 歩いてきた道を右に入ると、道沿いに向か
い合うようにあちらとこちらに何軒かの家が
あり、少しその家々から離れた場所に
『アレン』の家がある。


 『マニュエル』はこの道を通らず、家々の裏
から『アレン』の家へ向かった。


 そして、なんとか無事に『アレン』の家に
たどり着くことができた。


 「ふぅ。。。」


 安堵(あんど)のため息をつく『マニュエル』。


 (ここに掛けて、戻ろう。)


 裏手に回り、想いの(こも)ったハートの形の
宝石箱と手紙の入った布袋を背中から降ろ
し、裏口のドアノブにつるし掛けようとした
その時。
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登場人物紹介

昇龍 導光《しょうりゅう どうこう》


代々続く祈祷師の家系に生まれた。昇龍家第四十八代当主。五十歳。

非常に高い霊能力を持つ。

ダンディで背が高く、スポーツマン。 

物腰柔らかで一見祈祷師には見えない。

導光が愛するものは何といっても龍と家族そしてスイーツ。

持って生まれた類まれなる霊能力と格の高い魂で、様々な視えざる存在と対峙しながら

迷える人々を幸福へ導くことを天命の職と自覚し、日々精進を重ねるまさに正統派の祈祷師。

昇龍 輝羽《しょうりゅう てるは》


導光の娘。ニ十歳。 

聖宝德学園大学 国際文化学部二年生。両親譲りの非常に高い霊能力の持ち主。

自分の霊能力をひけらかすこともなく、持って生まれたその力に感謝し、

将来は父のような祈祷師になりたいと思っている。

龍と月に縁がある。

龍を愛する気持ちは父の導光に劣らない。

穏やかな性格だが、我が道を行くタイプ。

自分の人生は自分で切り拓くがモットーで、誰の指図も受けないという頑固な面がある。 

浄魂鳥《じょうこんちょう》ケツァール   /   マニュエル


普通の人には見えない、いわゆる霊鳥。

五百年前、『マニュエル』という名の人間としてある国に生きた前世を持つ。

あまりにも壮絶な過去を背負ったがために転生できず、

ある想いを果たすため『浄魂鳥』としてこの世に存在し、

その時をずっと待ち続けてきた。

花畑 満《はなばたけ みちる》 / アレン


二十歳。『輝羽』と同じ大学で同じ学部の同級生。

日本人離れした端正な顔立ちの美男子。

五百年前、人間であった『浄魂鳥』と同じ村に住んでいた『アレン』という名の若者の前世を持つ。

十五年前に亡くなった叔母の遺言がすべてを明らかにするカギを握る。

野原 美咲《のばら みさき》/ 満の伯母 


十五歳。聖宝德学園大学付属中学三年バラ組。

十五年前に亡くなった『花畑 満』《はなばたけ みちる》の叔母の前世を持つ。

その時の記憶を持ったまま生まれてきた。

『満』《みちる》同様日本人離れした顔立ちの超美人。積極的な性格。

赤いバラの花の女神 マリア


とにかく美しいものが大好きな女神。

導光の元を訪れ、ある国にいる『浄魂鳥』を日本に連れて来てほしいと依頼する。

すべての出来事はこの依頼から始まった。

その『浄魂鳥』の想いを果たすことができれば、自分が見護っていたある人も

幸せになれるのだと導光に訴える。

白いバラの花の男神 ローマ


『赤いバラの花の女神 マリア』の許婚《いいなずけ》。

いつも『マリア』に振り回されている『マリア』一筋の男神。

ある事情で結婚を先延ばしにされてしまう。

天の神から頼まれ、導光の家に届け物をする。

それは『浄魂鳥』と深い関わりのあるものなのだが。。。

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