山小屋での再出発
文字数 587文字
始めた『マニュエル』は、毎日がとても充実
していた。
不思議と、独りでいても淋しいと感じる
ことはなかった。
時々、『アレン』の家を訪れては、彼が
木工製品を作る姿をずっと眺めているうちに
自分も作ってみたいと思うようになってきた。
『アレン』の
ぐんぐんと腕を上げていった。
山小屋に戻ると、ひたすら木工作業を
続けていた。
気がつくと夜が明けていることもあった。
楽しかった。
夢中になれた。
今までずっと命令されるまま、ただただ
指示通りに学び、実践の繰り返しだった
あの時代。
そこでは、やりたい、やりたくないなどの
自らの意志を持つことなど、決して許され
なかった。
まるで国の意のままに動く
な人生。
それに耐えられず、真夜中に逃げ出そうと
する者もいた。
精神を
見張りの兵士に連れ去られたまま二度と戻っ
て来ない者もいた。
≪ 明日は我が身 ≫
自分もいつあのようになるかわからない。
頼れる者も信じられる者もいない孤独の中
で、不安と恐怖に押しつぶされそうになりな
がら、家族を思うことで何とか今まで生き抜
いてきた。
(なのに私は。。。)
それを考えると、『マニュエル』は無性に
死にたくなってくるのだった。
その死にたいという
この作業は忘れさせてくれたのである。
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