『ケツァール』の壮絶な過去 (二)
文字数 574文字
の家にやって来た。
その男によれば、自分は仲介人で、町の
資産家に頼まれて養子を探しているというこ
とだった。
「ある資産家が男の子を養子に迎えたいと
言っている。
子宝に恵まれず、どうしても跡取りを欲しが
っているそうだ。
それも七歳ぐらいの男子で、
得意な子供がいい。
その資産家の養子になれば、何不自由のな
い暮らしが出来る。
腹一杯食べたいものが食べられ、欲しいも
のは何でも買ってもらえる。
毎日、肌触りのいい
行って勉強もできる。
将来やりたいことがあるなら好きなことを
させてくれる。
こんな幸せが他にあるか?
食べ盛りの子供にひもじい思いをさせ、
一生貧しい人生を送らせるより、いっその
こと養子に出した方が子供のためだ。」
そう言って、重そうな革のバッグから
大きな布袋を取り出した。
そしてその中身を『ケツァール』の両親に
見せたのだった。
金貨だった。
みたこともないほどの金貨の山。
「これだけあれば立派な家も建てられる。
欲しいものや食べたいものが何でも手に入
るんだ。」
そう得意そうに言う男に両親はこう言って
断った。
「自分たちの子供は自分たちで育てる。」
しかし、その男も簡単には引き下がらな
かった。
「また来るから考えておいてほしい。」
そう言って去って行ったのである。
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