叔母の遺言(一)
文字数 1,271文字
この遺言を読んでいるということは、
やっと
これから私が『満』君にお話することは
すべて真実です。
そして『満』君なら、きっと私の話を信じ
てくれるはず。
そう心に言い聞かせ、この遺言にすべてを
託すことを決心しました。
私は、前世の記憶を持ったまま、
『満』君が生まれる三十年前に、この日本と
いう国に生まれました。
この国に生まれる五百年前、私は、ある国
で生まれ、そしてその国で育ちました。
両親は、私が幼い頃に相次いで亡くなり、
私は、叔父である父の弟の家に引き取られた
のですが。
村の暮らしはとても貧しく、そんな状況の
中でも、叔父夫妻は、私のことを自分の子供
のように可愛がってくれました。
叔父夫妻には、とても感謝していました。
けっして楽な暮らしではないのに、私の
ことまで育ててくれたのですから。
でも両親のいない私はいつも淋しくて。
一緒に暮らしていた
うらやましかった。
平気で両親にわがままを言える。
泣けばなぐさめてもらえる。
私は、いつも自分に
(迷惑をかけてはいけない。
私はこの家の子供じゃないんだ。
育ててもらっていることに感謝しなくちゃ
ダメ。。。)
と心の中で言い聞かせ。。。
家では絶対にわがままも言わず、けっして
泣きませんでした。
でも時々、こらえきれずに泣きそうになる
時もあり。
そんな時、いつも私の心の支えになってく
れたのが、近所に住む
『アレン』でした。
『アレン』は本当に優しい人でした。
みんなに
『アレン』は、私のことを誰よりも理解し
てくれたのです。
なぐさめてくれたものです。
木工製品を作っていたお父さまの後を継ぎ、
『アレン』は木工職人となりました。
そして
してくれたのです。
『アレン』の家の近くには、広い薔薇の
花畑があり、毎年六月、薔薇の花が満開に
なる頃、私たちはいつもその薔薇の花畑の
中で二人の将来について語り合ったものです。
私は、ローズピンクのその薔薇の花が
大好きでした。
「君を残して亡くなったご両親の分も絶対
に君を幸せにする。」
そう言いながら、『アレン』は、その薔薇
の花畑の薔薇でローズピンクの可愛いブーケ
を作り、私にプレゼントしてくれました。
初めて『アレン』から薔薇のブーケをプレゼ
ントされたのは七歳の時。
今から考えると、かなり大人びた七歳でし
たが、『アレン』は真剣でした。
『アレン』は、私に七本の薔薇の花をくれ
たのです。
毎年、ブーケの薔薇は一本ずつ増えていき、
そのブーケの薔薇が十九本目になった時、
私たちは十九歳になりました。
「来年、このブーケの薔薇の花は二十本に
なるね。
その二十本の薔薇の花のブーケを君にプレゼ
ントする時。
それは僕たちが結婚する時だよ。」
『アレン』のその言葉を聞いた時、私は
とてもうれしかった。
うれしさのあまり、私の目からは涙が止め
どなくあふれ、本当に幸せでした。
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