片目の霊鳥『ケツァール』
文字数 685文字
ここが日本だ。
君にとっては
本当に長い道のりだっただろう。
でも安心して。
私が絶対に君の願いを叶えるからね。」
肩に乗っている小さな鳥にそう優しく語り
かけたのは、
ここは成田空港国際線到着ロビー。
一ヶ月にも及ぶ現地調査を終えた
たった今、日本に帰国したところである。
季節は六月。
その小さな鳥とは、中南米に生息する
『ケツァール』という名の珍しい鳥。
鮮やかな青緑と赤のコントラスト。
まるでエメラルドとルビーの宝石をちりば
めたような色鮮やかな鳥である。
『ケツァール』は、導光の肩の上で羽を
バタバタはためかせ、美しく輝くエメラルド
グリーンの長い尾を左右に振りながら、全身
で日本にたどり着けた喜びを表現しているよ
うだった。
黄色い口ばしにつぶらな瞳が愛くるしい
『ケツァール』だが。
実はこの鳥には片目がない。
普通の人たちにはけっして見えない、いわ
ゆる
≪
導光は小さい頃、祈祷師であり、
あった父から、体の一部が
を聞いたことがあった。
前世の苦しみや悲しみから救われず、
不完全な鳥の姿となり、今世へ救いを求めて
やって来る。
あまりにも
その魂から、この≪
言う。
そして、背負い続けた苦しみがすべて
された時。
鳥本来の美しく完全な姿へと戻り、大きく
羽ばたくその瞬間に、その鳥が幸せにしたい
人間には素晴らしい
人間は理想の人生を完成させることができる
と言われている。
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