ある《神》から託されたもの

文字数 825文字

 「あの~。」


 この二人のやり取りを視ていた『輝羽』が

二人に声をかけた。


 「あっ、これは失礼いたしました。


 この家の方ですか?」


 「はい。」


 「昇龍  導光さまは。。。?」


 「私の父ですが。」


 「あっ、導光さまは、あなたのお父さま

だったのですね。」


 「はい。 昇龍  導光は私ですが。」


 騒ぎを聞きつけて、今度は導光が玄関まで

やって来た。


 「これは、これは。。。


 あなたが昇龍  導光さま。


 初めまして。


 (わたくし)

 『白いバラの花の男神(おがみ)  ローマ』で~す! 


 実は、ある《神》の(めい)により、導光さまに

これをお届けするようにと。」


 『ローマ』はそう言うと、導光にキラキラ

と輝く箱を差し出した。


 「これは?」


 「開けてみて下さい。」

 
 導光が箱の(ふた)を開けると、その箱の中に

は、三羽の鳥が入っていた。


 (霊鳥(れいちょう)か。。。これは。。。

 
 もしかして。。。


 まさか≪浄魂鳥≫。。。?


 口ばしのない鳥、片足がない鳥、

 
 そして。。。羽のない鳥。


 何という悲し()な鳥たち。


 色 ()せてしまっていて、もはや何色の鳥

なのかまったくわからない。)



 「今、この家には、片目のない鳥がいるは

ずです。


 この三羽の鳥たちは、かつてその鳥の家族

だった者たち。」


 「この三羽の鳥たちが、片目の≪浄魂鳥≫

『マニュエル』のかつての家族だったという

のですか?」



 「そうです。


 そして、もうすぐこちらに、その《神》が

お見えになります。


 それまでこの鳥たちを預かってほしいとの

ことです。」


 「わかりました。


 とにかく中にお入りください。」



 『ローマ』は、さも得意げにチラッと

『マリア』を横目で見ると、ニコっと

笑いながら、導光の家に入って行った。


 部屋に通された『ローマ』は、『満』に

気づくと、いきなり『満』のそばに近寄り、

グルッと『満』の周りを回っては不思議そうな

顔をした。


 そして、『満』の顔に自分の顔を近づけ、

じろじろと『満』を見つめると、

 「この男の子。。。


 誰かに似てるんだよな~。」

(つぶや)いた。

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登場人物紹介

昇龍 導光《しょうりゅう どうこう》


代々続く祈祷師の家系に生まれた。昇龍家第四十八代当主。五十歳。

非常に高い霊能力を持つ。

ダンディで背が高く、スポーツマン。 

物腰柔らかで一見祈祷師には見えない。

導光が愛するものは何といっても龍と家族そしてスイーツ。

持って生まれた類まれなる霊能力と格の高い魂で、様々な視えざる存在と対峙しながら

迷える人々を幸福へ導くことを天命の職と自覚し、日々精進を重ねるまさに正統派の祈祷師。

昇龍 輝羽《しょうりゅう てるは》


導光の娘。ニ十歳。 

聖宝德学園大学 国際文化学部二年生。両親譲りの非常に高い霊能力の持ち主。

自分の霊能力をひけらかすこともなく、持って生まれたその力に感謝し、

将来は父のような祈祷師になりたいと思っている。

龍と月に縁がある。

龍を愛する気持ちは父の導光に劣らない。

穏やかな性格だが、我が道を行くタイプ。

自分の人生は自分で切り拓くがモットーで、誰の指図も受けないという頑固な面がある。 

浄魂鳥《じょうこんちょう》ケツァール   /   マニュエル


普通の人には見えない、いわゆる霊鳥。

五百年前、『マニュエル』という名の人間としてある国に生きた前世を持つ。

あまりにも壮絶な過去を背負ったがために転生できず、

ある想いを果たすため『浄魂鳥』としてこの世に存在し、

その時をずっと待ち続けてきた。

花畑 満《はなばたけ みちる》 / アレン


二十歳。『輝羽』と同じ大学で同じ学部の同級生。

日本人離れした端正な顔立ちの美男子。

五百年前、人間であった『浄魂鳥』と同じ村に住んでいた『アレン』という名の若者の前世を持つ。

十五年前に亡くなった叔母の遺言がすべてを明らかにするカギを握る。

野原 美咲《のばら みさき》/ 満の伯母 


十五歳。聖宝德学園大学付属中学三年バラ組。

十五年前に亡くなった『花畑 満』《はなばたけ みちる》の叔母の前世を持つ。

その時の記憶を持ったまま生まれてきた。

『満』《みちる》同様日本人離れした顔立ちの超美人。積極的な性格。

赤いバラの花の女神 マリア


とにかく美しいものが大好きな女神。

導光の元を訪れ、ある国にいる『浄魂鳥』を日本に連れて来てほしいと依頼する。

すべての出来事はこの依頼から始まった。

その『浄魂鳥』の想いを果たすことができれば、自分が見護っていたある人も

幸せになれるのだと導光に訴える。

白いバラの花の男神 ローマ


『赤いバラの花の女神 マリア』の許婚《いいなずけ》。

いつも『マリア』に振り回されている『マリア』一筋の男神。

ある事情で結婚を先延ばしにされてしまう。

天の神から頼まれ、導光の家に届け物をする。

それは『浄魂鳥』と深い関わりのあるものなのだが。。。

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