『ビリー』、君は私の家族
文字数 520文字
連れて、時々山の奥まで食料の調達に行くよ
うになった。
『マニュエル』が探しているのは、
『ビリー』のお気に召さないキノコ、栗や
クルミなどの木の実、そして野イチゴや山菜
である。
野菜は山小屋の前の畑で栽培している。
小さいころ、兄と一緒に畑を耕していた
ころを思い出し、少しずつ
した畑。
おかげで、ニンジンやジャガイモ、玉ねぎ
などは豊富だった。
『ビリー』はなぜか山に住む動物を次から
次へと連れてくる。
カモシカ、アナグマ、サル、
野ウサギやリスまで。
動物たちは、いつの間にか山小屋の周囲に
居つくようになり、ちょっとした野生動物園
の開園だ。
『アレン』を失い、孤独に死んでいくこと
ばかり考えていた『マニュエル』。
命の恩人ならぬ救いの山ネコ『ビリー』の
おかげで、毎日を、本当に毎日を楽しく過ご
すことができた。
『ビリー』は、もう『マニュエル』にとっ
て家族と同じだった。
いや、幼いころに家族と別れ、親の愛に包ま
れて育つことができなかった『マニュエル』
にとって、『ビリー』は家族以上の存在。
人間以上に自分のことを理解してくれる
『ビリー』が、今や『マニュエル』にとって
はすべてだったのである。
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