伯母との思い出
文字数 690文字
落ち着いて遺言を読もうと試みていた導光
だったが、次第に感情を抑えられなくなり、
最後の、この合言葉を読み上げる
さすがに涙がどっとあふれ、声は上ずってしま
っていた。
『満』は、ずっと一点を見つめながら涙ぐん
でいた。
幼い頃に亡くなってしまった叔母。
『満』の中に、叔母の記憶は、今も確かに
生きていた。
母親に叱られた時、すぐに抱き上げて
てくれた叔母。
叔母にだっこされている時は、なぜか
とても安心できた。
自分を抱きながら、まるでゆっくり優しく
泣きじゃくっていても、いつの間にか眠って
しまっていた自分。
「『満』君。
叔母さんの写真は持っていないの?」
『輝羽』は『満』の伯母がどんな人だった
のか、その姿が見たかったのだ。
「あっ、持ってるよ。
いつも手帳に入れてあるんだ。」
「わあ。。。見せて。見せて。。。」
「はい。」
その写真は、叔母に抱っこされて写ってい
る三歳ぐらいの『満』の写真。
「うわ~。
叔母さん、すっごく
しかも『満』君そっくり!」
「えっ? そう?」
「『満』君もそうだけど、何か、日本人離れ
した、目鼻立ちのはっきりした顔立ち。
欧米の人みたい。」
「叔母は誰にも似ていないんだ。
父とも似ていないし、祖父母とも全然似て
ないし。」
「でも『満』君そっくりよ!」
「母が、僕を連れて叔母と一緒に公園に
行った時。
みんな叔母に向かって、
「「ま~あ。。。可愛いお子さんですね。
お母さんそっくり。」」って
よく言われていたらしい。
母はちょっとムッとしてたらしいけど。」
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