すべては『アレン』のため
文字数 760文字
ような想いでここまで耐え抜いてきたのかを
知った導光は、励ますように≪浄魂鳥≫に
語りかけた。
「そうだったのか。
君は、そんな壮絶な過去を背負っていた
んだね。」
そう問いかけた後、導光は、それ以上
≪浄魂鳥≫に掛ける言葉がなかった。
どんな
見つからなかったのである。
≪浄魂鳥≫のあまりにも悲惨な生涯に、
導光自身がショックを受け、その場に立って
いられないほどの悲痛をその身に感じていた
のである。
「なんということだ。
五百年前のこととはいえ。。。
あまりにも
そんな
よくぞここまで耐えてきたね。
『ケツァール』。
いや。
『マニュエル』。」
『マニュエル』がずっと背負い続けて来た
底知れぬ孤独と絶望は、まるで魂の叫びのよ
うに導光の胸にどっと重くのしかかってきた。
(なんという
よくこんな状況でここまで耐え抜いてこれ
たものだ。)
だが導光は、同時に『マニュエル』の叫ぶ
魂の中に一筋の光を視ていた。
その一筋の光、それはまさに【希望】。
【希望】という一筋の光が、絶望に打ちひ
しがれた『マニュエル』の魂の中で、ずっと
生き続けていたのだ。
(これは奇跡としか言いようがない。
いったい何が、『マニュエル』をここまで
支えてきたのだろう。)
導光がそう思った時、『マニュエル』は
きっぱりと答えた。
「すべては『アレン』のため。
『アレン』。
彼は私のことを最後の最後まで理解して
くれた友。
生きる勇気を与えてくれた心の支え。
私のために命を落とした『アレン』に、
この私ができることはただ一つ。
命の恩人への恩返しのために。。。
そして、【幸福】を届けるために
≪浄魂鳥≫となること。
ただそれだけでした。」
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