十年後の家族
文字数 431文字
なんと『ケツァール』一家は、見事に人も
元々、商才のあった父親は『ケツァール』
を養子に出した見返りで得た金貨を元手に
新しい事業を展開し、大成功を収めていたの
である。
貧しかった頃には想像すらできなかった
夢のような裕福な暮らし。
兄もひたすら勉学に励み、父親の片腕と
なって忙しい日々を送っていた。
そんな優しい兄は、養子に出した弟
『ケツァール』のことを一日たりとも忘れた
ことはなかった。
ずっと会いたいと思っていた。
ところが弟の行方は、一向にわからないま
まであった。
弟が養子に行った資産家の住所は父親が
知っているはず。
だが、いくら問い詰めても父親は兄をはぐ
らかすだけだったのである。
「もう昔のことだから、
どの辺りの家だったのか覚えていない。
引っ越したのかもしれない。」
そう繰り返すだけの父親の態度にずっと
不信感を抱いていた兄は、
弟の行方を探させていたのである。
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