露わになる本性
文字数 839文字
どいつもこいつもきれいごとばかりまくし
立てやがる。
オレはうんざりだった。
うんざりだったんだよっ。
家族だの、絆だの、信頼だの。
そんなものが大切だと、毎日毎日、耳に
タコができるくらい言い聞かされ。。。
『マニュエル』。
お前はいつも多くの人間に
尊敬されていた。
お前の姿は、このオレにはいつも
見えた。
オレもお前のようになりたかった。
だが、どんなにそうなりたくてもオレには
無理だった。
お前の存在。
お前の持つその魂。
手に入れたかった。
しかし。。。
どんなに願おうとも、オレの願いは絶対に
叶わない。
手に入れたくても、けっして手に入れられ
ないお前の魂。
オレは、その時思ったんだ。
手に
汚してしまえっ。
もっと
ものだ。
何度生まれ変わろうと魂は変わらないなどと
いうことは絶対にない。
悲惨な運命に
その太陽のような美しい魂が
どす黒い魂に変わるところをオレは視てみた
いんだ。
人間を救う?
命は
笑わせるなっ。
お前が本当に貧しさに耐えられるのかどう
か、たっぷり味あわせてやるよ。
この目で不幸になっていくのをじっくりと
視てやる。
≪運命の書≫を手にした時のあの
今でもはっきりと覚えている。
お前の運命をすり替え、その運命を筋書き
通りに書き換えたあの瞬間。
あの胸の高鳴り。
あの高揚感。
生まれて初めて味わった。
今まであんなにスリルを味わったことは
一度もない。
たまらなく喜ばしいその一瞬に、オレは
全身の震えが止まらなかった。
心から信じていた家族によって敵の国に
売られ、自分が生まれた国に、自分の家族に
復讐するお前の姿を楽しみにしている。
そんなお前を一体誰が助けるというのか。
そんな人間などいるはずがない。」
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