真実を知って
文字数 650文字
どうして意に
するの?」
『輝羽』は
自分でもなぜだかわからないが、自分の
意志で自由に生きていけない人生だけは絶対
に歩みたくない。
物心ついた時には、すでにそう強く思う
自分がいたのである。
とりわけ結婚に関しては強い執着があり、
例えそれが尊敬する父親、導光の勧める相手
であったとしても絶対に従わないという
があった。
もっとも自分の意志をあくまで押し通す
そんなことをすることがあるわけはないので
あるが。
『満』の伯母の遺言を聞いて、
『マニュエル』はうつむき、とても悲しそう
だった。
そして、自分のせいで、多くの人たちを
犠牲にしてしまった過去を
に、片方しかない目でじっと遠くを見つめ
たかと思うと、その目をギュッと閉じ、
苦渋の表情を見せた。
「『輝羽』。
この時代はそういう時代だったんだろう。
ましてや女性が一人で生きていくには難し
い時代だ。」
導光は『満』の方を見た。
そして、
「『満』君。
君の伯母さん、
いや『ニーナ』は命を絶ったあと、
ここに至るまでどうしていたんだろうね。」
「僕にもわかりませんが、気の毒すぎます。
まさか叔母さんが、そんな人生を送ってい
たなんて。
今、この叔母さんからの遺言、初めて聞き
ましたけど。
どうやって叔母さんの手元にこの宝石箱が届
いたのかすごく不思議です。」
「そうだね。
もしかしたら、そのこともこの遺言に書か
れてあるかもしれないね。
続きを読むよ。」
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