別世界からの侵略「前編」(4)

文字数 1,548文字

「ふざけるなよ。そんなこと、俺たちが許す訳ないだろう!」
「別にふざけていないわよ。それに、許すも許さないも、私は高確率で予想される未来を、ただ話しただけなのだから……」
 港町隊員の言葉にも、小島参謀は涼しい顔で受け答えしている。
「で、参謀、参謀たちの兵力がどの位なのか、僕たちに教えてくれたりするの?」
 大師隊員が参謀に訊ねる。
「大悪魔軍の兵力ってこと? そうね、ざっと二万隻、五百万人ってところかしら?」
 僕たちはそれを聞いて度肝を抜かれた。何と言う数なんだ! 参謀が多少サバを呼んだにしても、そんな数が攻め込んで来たら、地球の兵力で太刀打ち出来る筈がない。それが本当なら、確かに悪魔に養殖されるのが幸せと考える人も出るかも知れない。
「あ、安心して。まだ全軍が裂け目を抜けていないみたいだから。今こっちにいるのは、せいぜい十分の一、五十万人ってとこね」
「それでも相当な数です。一人の参謀でもこの強さなのに、それが五十万人って、もう地球は植民地になって、人類は家畜として生きるのが最善の策なんじゃないですか?」
 正直、情けないが、僕は泣き言を言ってしまっていた。
「チョウ君、馬鹿にしないで頂戴ね! 間違っても私をあんな連中と同レベルと考えないで欲しいわ! 群れなきゃ戦えない様なカスの大悪魔、何万人いようが、私が本気を出せば一捻りよ! 大体、悪魔の癖に軍隊なんてもの創って、群れで侵略して来るなんて、悪魔の風上にも置けないわ!」
 僕は良く分からなくなってきた。それはストラーダ隊員も同じ様だ。
「シンディさん、シンディさんは侵略者のスパイじゃないの? もしかして……」
「サーラちゃん、私、ちょっと意地悪だったかな? 少し説明してあげるわね」
 小島参謀は、子供の様に目を腫らしている鳳さんに、優しい声で自分の種族のことを説明し始めた。
「大悪魔ってのはね、時空の裂け目を通り抜けることの出来る異時空人のことなの。
 この大悪魔は、さっき言った様に他の生物、大概人間だけど、その生物の生気を吸って生きているの……。そう言う意味では、私も同じ異時空人、生気を吸って生きている奴らの仲間、つまり同じ化け物よ。
 でもね、奴らとつるんでいる訳じゃ無いの、私は侵略なんて馬鹿げた理由でここに来たんじゃないのよ……。あ、私の方がずっと情けない理由か!」
「じゃぁ、小島参謀は僕たちの敵じゃないのですね? ならば、僕たちと、一緒に戦ってくれはしないのですか?」
「勿論、サーラちゃんたちが戦うと言うのなら、私も力は貸すけどね……」

 僕は正直、良く分からなかったが、ただ嬉しかった。鳳さんも、きっと僕と同じ気持ちに違いない。だが、ストラーダ隊員は僕よりも遥かに冷静だった。
「じゃ、シンディさん、シンディさんがこの時空にやって来た理由って、本当は一体何なの?」
 小島参謀はいつもの癖の様に腕を組んで考え込んだ。そして、結局鳳さんに全てを話すことにした様だ。
「仕方無いわね。これはサーラちゃんが自分で調べて見つけて欲しかったんだけどな」
 おい、

で遊んでいたのか?
「実はね、この超異星人の話、全部嘘なの。本当はこれ、私の兄なのよ」
「え、ええ??」
「じゃ、シンディさんが話してくれた、ビッグバンが何回も繰り返される前の時代とか、当時の超能力者が結集して戦った、宇宙全土の破壊神って話しも……」
「ぜ~んぶ嘘。この人は破壊神どころか、リビングのソファに寝転がるのが一番って言って、縦のものを横にもしない様な無精者なの。仮にもし、他人が闘ってくれるんだったら、決して自分では闘わないって奴で、闘いって言ったら、精々ゲームでモンスターを狩るくらいかしら? 何か言うことある?」
「いや、別にない……」
 わー、超異星人の遺体が喋った!!!
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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