鳳さんと天空橋さん(7)
文字数 1,529文字
「鈴木君、重いよね。私も支えるよ」
天空橋さんが両手を天井について持ち上げようとする。だが、僕とアルトロでも支えるのがやっとなのだ。天空橋さんが持ち上げられる訳がない。
でも、もしかすると、天空橋さんもアルトロの種族に憑依されているとか……。
「残念ながら、それはない」
でも、無駄でもそう言って貰えるのは心強い。それに助けが来ると思ったら、何か、この密着した体勢も恥ずかしく感じてきた。
僕はせめて接触を軽減する様に、身体を浮かそうと思ったが、下がりこそすれ、上げることなど不可能だった。だが、今は無心になるしかない。そうでないと、非常にヤバいことになる。
「鈴木君、ちょ、ちょっと……」
「あ、ご免……」
僕は顔が真っ赤に火照っていた。ハッキリとは見えないが、天空橋さんもきっと恥ずかしがっている違いない。
「あ、鈴木君、別に……、いいよ」
そんな風に言われると、余計に意識してしまう。意識すると余計に固く、圧力が掛かってしまう。なんか、極楽の様な、地獄の様な……。
だが、そんな余裕を持っていられたのは、助けが来ると分かってから数分の、最初のうちだけだった。
僕自身の体力が異常に低下していったのだ。最初、僕には理解できなかったが、僕の突いた両手に触れる血の水溜まりで、僕にも何が起こっているのかやっと理解できてきた。
出血が多すぎるのだ。
背中の痛みは、アルトロの能力で忘れることが出来ていたのだが、血は止まっていなかった。いくらアルトロの助力があっても、元になる僕の身体が死んでしまっては、アルトロでも、どうすることも出来はしない。
「鈴木君、大丈夫、しっかりして!」
「ん、僕、寝てた? ああ、大丈夫。まだ大丈夫」
僕はいつの間にか寝てしまっていたらしい。しかし、妙に寒い。何かふわっとしたかき氷のクッションに包まれている様な感じだ。
それにしても、天空橋さんが潰れなくて良かった。
「今度、僕が寝そうになったら、思いっきり引っ叩いて! そうしないと二人とも死んじゃうから……」
僕の悲痛な台詞に、何故か、天空橋さんはちょっぴり笑っていた様な気がする。
「もう、潰れてもいいかもね」
「そんなこと言わないで。楽しいことでも考えようよ。助かったら何かするとか」
「鈴木君、中学の時のこと、覚えている? 鈴木君って、いつも私のこと見てたよね」
「え?」
「私、どうしてだろうって、ずっと考えていたの。でね、鈴木君、私の事を好きなんじゃないかって思った。それから、鈴木君の視線を感じると、いつもドキドキしていたんだよ。だからね、鈴木君と目が合った時、思わず嬉しくなって、つい微笑んじゃった。でも、結局、私の勘違いだったの。そんなものよね」
「勘違いじゃないですよ。天空橋さんに、僕、ずっと憧れたんですから……」
「そっか、やっぱり両思いだったんだ……。良かった。死ぬ前にお話し出来て。もう思い残すことないわ。鈴木君の好きな時に力抜いていいからね。一緒に死のう……」
「僕は嫌ですよ」
「え? ああ、私とじゃ駄目か。そうよね、鈴木君は今、学校一の美少女の彼氏だもんね」
「そんなんじゃないです。え~と、僕は助かったら……、天空橋さんとデートして、キスして、嫌われない程度に少しエッチなこともして、それから……」
「鳳さんに、怒られるよ」
「いいです。天空橋さんがいれば僕は何も文句ないです。どうです、僕と少しエッチなこと……、いや、付き合ってくれませんか?」
「助かったらね。そうしたら、いっぱいエッチなことしましょうか?」
僕たち二人は笑っていた。
でも、見えなかったけど、僕は天空橋さんが泣いていたのを知っている。
彼女は僕の腕に触れ、もう氷の様に冷たくなっているのに気付いていたのだろう。
天空橋さんが両手を天井について持ち上げようとする。だが、僕とアルトロでも支えるのがやっとなのだ。天空橋さんが持ち上げられる訳がない。
でも、もしかすると、天空橋さんもアルトロの種族に憑依されているとか……。
「残念ながら、それはない」
でも、無駄でもそう言って貰えるのは心強い。それに助けが来ると思ったら、何か、この密着した体勢も恥ずかしく感じてきた。
僕はせめて接触を軽減する様に、身体を浮かそうと思ったが、下がりこそすれ、上げることなど不可能だった。だが、今は無心になるしかない。そうでないと、非常にヤバいことになる。
「鈴木君、ちょ、ちょっと……」
「あ、ご免……」
僕は顔が真っ赤に火照っていた。ハッキリとは見えないが、天空橋さんもきっと恥ずかしがっている違いない。
「あ、鈴木君、別に……、いいよ」
そんな風に言われると、余計に意識してしまう。意識すると余計に固く、圧力が掛かってしまう。なんか、極楽の様な、地獄の様な……。
だが、そんな余裕を持っていられたのは、助けが来ると分かってから数分の、最初のうちだけだった。
僕自身の体力が異常に低下していったのだ。最初、僕には理解できなかったが、僕の突いた両手に触れる血の水溜まりで、僕にも何が起こっているのかやっと理解できてきた。
出血が多すぎるのだ。
背中の痛みは、アルトロの能力で忘れることが出来ていたのだが、血は止まっていなかった。いくらアルトロの助力があっても、元になる僕の身体が死んでしまっては、アルトロでも、どうすることも出来はしない。
「鈴木君、大丈夫、しっかりして!」
「ん、僕、寝てた? ああ、大丈夫。まだ大丈夫」
僕はいつの間にか寝てしまっていたらしい。しかし、妙に寒い。何かふわっとしたかき氷のクッションに包まれている様な感じだ。
それにしても、天空橋さんが潰れなくて良かった。
「今度、僕が寝そうになったら、思いっきり引っ叩いて! そうしないと二人とも死んじゃうから……」
僕の悲痛な台詞に、何故か、天空橋さんはちょっぴり笑っていた様な気がする。
「もう、潰れてもいいかもね」
「そんなこと言わないで。楽しいことでも考えようよ。助かったら何かするとか」
「鈴木君、中学の時のこと、覚えている? 鈴木君って、いつも私のこと見てたよね」
「え?」
「私、どうしてだろうって、ずっと考えていたの。でね、鈴木君、私の事を好きなんじゃないかって思った。それから、鈴木君の視線を感じると、いつもドキドキしていたんだよ。だからね、鈴木君と目が合った時、思わず嬉しくなって、つい微笑んじゃった。でも、結局、私の勘違いだったの。そんなものよね」
「勘違いじゃないですよ。天空橋さんに、僕、ずっと憧れたんですから……」
「そっか、やっぱり両思いだったんだ……。良かった。死ぬ前にお話し出来て。もう思い残すことないわ。鈴木君の好きな時に力抜いていいからね。一緒に死のう……」
「僕は嫌ですよ」
「え? ああ、私とじゃ駄目か。そうよね、鈴木君は今、学校一の美少女の彼氏だもんね」
「そんなんじゃないです。え~と、僕は助かったら……、天空橋さんとデートして、キスして、嫌われない程度に少しエッチなこともして、それから……」
「鳳さんに、怒られるよ」
「いいです。天空橋さんがいれば僕は何も文句ないです。どうです、僕と少しエッチなこと……、いや、付き合ってくれませんか?」
「助かったらね。そうしたら、いっぱいエッチなことしましょうか?」
僕たち二人は笑っていた。
でも、見えなかったけど、僕は天空橋さんが泣いていたのを知っている。
彼女は僕の腕に触れ、もう氷の様に冷たくなっているのに気付いていたのだろう。