小島参謀の秘密(7)

文字数 1,723文字

 超異星人は、その時見つかった?
 でも、僕とアルトロは、この説明に矛盾を感じていた。
「以前、小島参謀は超異星人のことを『どの異星人よりも強力な戦闘力を持った』と私に紹介されましたよね。でも今、あなたは『彼は発見された時から氷詰めの遺体だった』と(おっしゃ)った。これでは彼が強力な戦闘力を持っていると言う事が、地球人の誰にも分からないではないですか?」
「アルトロ君だっけ、疑問はご尤もだわ。でも、もう少し話しを聞いてくれるかな?」
 アルトロも、一応了解した様だった。
「最初、その遺体が何か? 誰にも分からなかったわ。当然、有識者が調査するわね。で、分かったことは、これから言う三点よ」
 三点?
「彼を覆う氷は、表面の部分だけでも太陽系創世記の頃のものだと言うこと。そして、その小惑星は太陽系外からやって来たものだと言うこと。最後にその遺体が何であるか、説明している石板が氷の中にあったこと」
「どうして、そんな石板だって分かるのですか? 内容も読んでいないうちから?」
「あ、失礼したわね。君の言う通り、正確には何やら石板らしきものが、氷の中に存在しているってのが、その段階で分かっていたことよ」
「あ、上げ足を取ってしまいました。続けてください」
 アルトロも、ここは折れた。
「そこで急遽、父から宇宙考古学者で古代語が専門の私が呼ばれたって訳。勿論、石板の言葉を分かる様に翻訳する為にね」
 何か僕にも少し分かってきた。
「それで、超異星人のことが書かれていたのですね」
「そうなの。私ですら半年も掛かってしまったけどね……。
 そこには、ビッグバンが数回繰り返される程の古い時代に、この超異星人が暴れまくっていたってことが書かれていたの。当時の他の異星人、もう創世記の神話の世界みたいだけど、彼らは協同して、この超異星人を凍り付かせ、その状態で全員の念エネルギーを氷の中心に集中するように集め、やっとのことで氷漬けにされて動けなくなっていた超異星人を、氷漬けにしたまま倒したと記されていたのよ。まぁ石板は、自慢話の記念碑だったって訳ね。
 それを聞いた世界政府、それと父は、この超異星人の遺体を、軍事転用することを考えたの。
 当時、異星人の存在が政府レベルでは常識になりつつあり、その対策も検討され始めていたわ。でも、これと言った切札が無い。そこで、川崎慶究氏の案を入れ、異星人警備隊を組織すると共に、政府は超異星人を彼らの為の、最後の超兵器とすることを決定したの。
 ただ、実現可能性が百パーセントで無い超異星人は、異星人警備隊には現状伏せることとし、私を異星人警備隊作戦参謀兼川崎隊長秘書として、超異星人の公開投入時期を図らせ、補助頭脳AI研究の第一人者のサーラちゃんを日本に呼んで、異星人警備隊として隊員の武器を研究開発して貰う傍ら、SPA-1のブラッシュアップをお願いしているという訳なの。分かったかしら?」
「いくつか疑問があります。質問してもいいですか?」
「どうぞ、アルトロ君」
 しかし、小島参謀は僕が話しているだけなのに、僕とアルトロの区別が付くのか……。
「政府にしても、お父様にしても、その石板を、失礼ですが、翻訳に絶対誤りがないと言いきれない『超戦闘力を持った異星人』などと言う話を、どうして安易に信じることが出来たのですか?」
「それは簡単。超異星人の腕に、昔サーラちゃんが身体の不自由な方の為に開発した、運動補助ロボットを装着して、試しに動かしてみたら、派手にビーム砲をぶっ放したからなの。それで十分だったみたいよ」
 成程、それでストラーダ隊員が呼ばれたって訳か……。
「次の質問ですが、小島参謀はいつから異星人になったのですか?」
「アルトロ君、それ位は自分で考えてね。私が何もかも話すと思ったら大違いよ」
 そう言うと、小島参謀はやおら立ち上がり、親代わりをしている少女に言葉を掛けた。
「サーラちゃん、今度こそ本当に参謀会議に行ってくるわね。お夕食は遅くなるから、悪いけど一人で食べてね。家政婦(かねこ)さんが、今夜は腕に撚りをかけてトスカーナ地方の郷土料理を作ってくれるそうよ、楽しみね」
 小島参謀はそう言うと、返事も待たず、僕らを置いてスタスタと歩き去っていった。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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