小島参謀の秘密(2)

文字数 1,181文字

「やはり嘘だった様だな!」
 そりゃそうだ! あんな話を信じる方がどうかしているだろう。
「鈴木隊員は、他の隊員とは異なる、見たことも無い特殊能力を持っているのか?」
「はい」
 ブザー音……。これは嘘と判断される。まぁ、そうだろうな。
「鈴木隊員の特殊能力は、私の能力と同一か?」
「はい」
 ブザー音? 不思議な事に、これも嘘と判断される。
 この後、全員の隊員能力と同一かと訊ねられたのだが、僕の「はい」の答えは、嘘発見器にいずれも嘘と判断された。
「鈴木隊員の特殊能力は、他の隊員の能力のどれかと同一か?」
「はい」
 ブザー音? これも嘘と判断される。
 川崎隊長は考え込んでしまった。それはそうだ。最初の質問と相反する質問をしたのに、両方とも嘘と判断されたのだから……。
 暫くして、港町隊員が閃いたらしく、マイクを隊長から取り上げて一つの質問をする。
「鈴木チョウ、お前には異星人能力が最初から無いんじゃないのか?」
「はい」
 これには嘘だと言うブザー音は鳴らなかった。それはそうだ。僕は単なる地球人なのだから……。
 作戦室にいる面々は、お互いの顔を交互に見合わせている。そして、その間、暫く沈黙が続いていた。
 そして、意を決した隊長が、僕に最後の質問をする。
「鈴木挑君、君は異星人ではなく、この星に住む、只の、普通の人間か?」
「はい!」
 予想通り、この答えにもブザー音は鳴らなかった。当然と言えば当然だ。事実なのだから。だが、この答えが与えた波紋は大きかった。
「た、隊長、どうしますか? 普通の人間に俺たちの存在を知られちまったぜ」
 港町隊員が隊長に確認する。だが、人間ってんなら、ストラーダ隊員だって普通の人間だろうが!
「口封じをした方がいいかもね」
 大師隊員が物騒なことを言う。
「だが、私たちは人間との友好を示す為の組織だ。ここで簡単に人間を殺したら、結局、後で異星人は危険な存在だという証拠とされかねない。まぁ、これまで彼は、私たちが異星人だと知っていても、別段大騒ぎすることなども無かった。このまま人間の隊員が増えたとしても、別に何も問題ないだろう……」
 この川崎隊長の判断で、僕は普通の人間で、特殊能力も全くないのだが、異星人警備隊の一員として残留することが許されたのだ。
 勿論、全員で僕を抹殺しようと言うのなら、僕はアルトロの力を借りて闘う心算だったし、それなら五人相手でも、そう簡単に負けるとは思っていなかった。でも、取り敢えず無駄な闘いをせずに済んだことは、僕にとっては有難かった。
 で、僕の嘘発見器は、ストラーダ隊員が無言で外してくれた。だが、その時彼女は、僕の手の中に一枚の紙切れを握らせていたのである。

 帰宅した後、それを読んでみると、その紙切れには、こう書かれていたのだ。
「明日の放課後、体育館の裏に、誰にも気付かれない様に、一人で来て欲しい」と……。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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