別世界からの侵略「前編」(5) 

文字数 1,407文字

 小島参謀は、何故、自分がこの様な事を始めたのかの説明を始める。
「この馬鹿兄貴が、どうしたものか、この世界に遊びにきて、自分で自分を氷漬けにしちゃったのよ。その直前、思考聴覚魔法(テレパシー)で、自分は仮死状態で待っているから、私に助けに来いって連絡して来たって訳。
 それもご丁寧に、氷の小惑星『オトヒメ』の中に入れろって、酷く面倒な注文つけてきたのよ。そうすれば、はやぶさXが回収するからって」
 確かに、はやぶさXによる小惑星まるごと捕捉計画は昨年あったけど、だからと言って、態々小惑星に隠れて地球に来るなんて、どんな理由があったと言うのだろうか?
「それで、その氷漬けの兄貴を救出するのに、私も調査隊に加わる必要があって、物質転移と同時に氷の表面に古代宇宙語のプレートを付け、私はシンディ小島と言う古代宇宙語の第一人者の姿になって、彼女と入れ替わったの」
 小島参謀は、シンディ小島さん本人では無く、大悪魔が擬態したものだったのか……。
「本物のシンディ小島さんは、いったいどうしたのだ!」
 川崎隊長が鋭い指摘をする。だが、小島参謀は別に驚くことも無いようだった。
「勿論、殺してないわよ。彼女なら兄貴の娘と一緒に、古代宇宙の神秘を楽しんでいるわ。その条件で、彼女の姿を一時的に借りたんだもの……」
 それで川崎隊長も引き下がる。
「でね、小島のお父様に私を呼び戻す様に依頼して、この馬鹿げた氷中人間を救い出し、プレートの翻訳を行ったの」
 しかし、宇宙古代言語なんて、何でも出来るんだな、大悪魔って……。
「そんなこと無いわよ。だって、この文字板は、私の考えた自作自演の出鱈目だもの」
 はぁ……。
「むしろ、氷を溶かす方が大変だったわ。この人は極光乱舞呪文で自分を凍らせた上に、条件発動呪文で、氷が溶け始めたら、この氷漬けの呪文が再び掛かる様に設定していたの。もう、私じゃなかったら、絶対解呪できなかったわね」
 ここで、再びストラーダ隊員が質問をする。
「彼の救出が目的だったのは分かったわ。でも、何故、超異星人なんて、でっち上げの話で、私たちを騙す必要があったの?」
「その理由なんだけどね、それが、兎に角、全く訳の分からないものなのよ」
 え? 小島参謀も訳分からないって?
「実は全部、兄貴の要望なの。この組織を作らせて、自分を他人が憑依出来るようにしろって。ま、それで兄貴が必要な生気は、憑依したひとから貰えば良いやってことになったのだけどね」
 成程、それで超異星人になると、僕は生気を吸われた状態になって、精神的、肉体的な疲労が出てきてしまうのか。
「小島参謀のお兄さんは、何時から覚醒されていたのですか?」
「氷が解ける前から意識も取り戻していたし、自力で時空を越えて帰ることも出来た筈よ。なのに、彼はここで憑依されることを望んだの。本当に訳分からない! 多分、面倒だったのじゃないかな、直ぐ帰るのが。でも、私も面白そうだったから、つい兄の意見に従うことにしたの」
 面白そうだったから……ですか。
「そこで、父に提出されていた『異星人警備隊設立の建白書』を見て、川崎隊長に異星人警備隊の設立を認めさせるからって、代わりに二つの条件を飲んで貰ったって訳」
 二つの条件?
「そう、一つは、この宇宙最強……、ま、嘘だけど、宇宙最強の異星人をロボット化する計画を進めること。もう一つは私自身を隊長付き秘書兼作戦参謀として異星人警備隊に参画させることよ」
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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