別世界からの侵略「後編」(1)

文字数 1,170文字

 その頃、川崎隊長の宇宙船では、ちょっとした内乱が起きていたと言う。

「隊長さんよ、参謀様の指示に従わないのかい? 参謀様は『見つからない様に隠れていろ』と仰っていたぜ」
 港町隊員が、川崎隊長の指図に文句を付けてきた。それに対し、川崎隊長もいつもの威厳はどこへやら、港町隊員に荒っぽい言葉で反論する。
「馬鹿言うんじゃねえ! このままじゃ、あの悪魔に全ての手柄を取られちまう。それに、あいつ等が戻ってくる保証なんてないんだ。敵が混乱している今こそ、悪魔軍を殲滅させるチャンスなんだ!」
「慶究隊長、敵の戦力も分かっていないのに、何考えてんだよ。僕たち、たった1隻なんだよ! 分かってるのかい?」
 少年の姿で実の父親の大師隊員が、自分の息子の決断に異論を唱えた。
「父さん、隊長は私だ。それに我らの宇宙船の戦闘力を見くびらないで欲しいな。敵の戦力が分かっていないのは、あの悪魔参謀だって同じだろう? 悪魔参謀なら勝てるって保証はないんだぜ」
「いいや。多分、参謀は分かってたんじゃないかと思うよ」
「もう止めてよ! あんたたち、こんな時に何考えているのよ!」
 東門隊員が久し振りに言葉を口にする。だが、港町隊員はその発言を一蹴した。
「役立たずは口出すんじゃねえよ」 
「で港町、お前はどうしたいんだ?」
「俺は死にたくねぇだけさ」
「だったら、船の外に出るか?」
「馬鹿言え、外は宇宙空間だろうが!」
「だったら、船長に従うんだな」
 川崎隊長は、黙って銃の手入れをしているストラーダ隊員にも確認する。
「地球人のお嬢ちゃんはどうするね? 宇宙空間に逃げ出すかな?」
「好きにしなさいよ。どうせ、あなたたち異星人には、地球なんて自分の星じゃないもの、危なくなったら逃げるんでしょう? それに、今のあたしには、宇宙船に乗ってくしかないんだから……」
 ストラーダ隊員の投げやりな言葉に、東門隊員が彼女を窘める。
「ストラーダ隊員、あなた小島参謀が仲間を信じろって言ったのを……」
「あたしは、シンディさんに見捨てられて、もう一人ぼっちなのよ! 死んだとしても誰も悲しむ人なんかいないわ」
 そう言われては、東門隊員にはもう何も言うことが出来ない。
「じゃ、決まりだな。船長命令だ、左十時の方向、敵艦の密集箇所に目掛け、主砲発射!」
「へいへい」
 川崎隊長の指示で、港町隊員は敵艦の密集箇所に砲撃を行った。その弾丸は見事敵艦の一つに命中し、爆発の連鎖で次々と敵艦が撃墜されていく。
 別の箇所を川崎隊長が指示し、再度港町隊員が主砲の発射ボタンを押す。これも敵艦に命中し、またも数隻の誘爆を惹き起こした。
「ふ、中々、良い腕だな……」
 川崎隊長の呟きは、当の港町隊員には聞こえなかった。ただ、逆に彼は「的確な目標指示だ。流石隊長、伊達に侵略軍宇宙船の船長じゃねえな」などと思っていたのである。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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